保護者の方へ・就学・進学

18歳以降の進路 — 就労継続支援A型/B型・就労移行・福祉的就労の全体像と選び方

高校卒業後の進路として、一般就労・就労移行支援・就労継続支援A型/B型・生活介護・自立訓練の違いを完全比較。工賃/賃金水準、利用期間、移行率、向いているケース、申請手続きまで保護者が知っておくべきことを整理します。

公開: 2026-05-29読了 約10

特別支援学校高等部・通常高校・通信制を卒業した障害のあるお子様は、その先で「一般就労」「就労移行支援」「就労継続支援A型/B型」「生活介護」「自立訓練」「進学」のいずれかに進みます。制度名が似ていて混乱しやすいため、本記事では6つの進路を保護者目線で完全整理し、それぞれの賃金水準・利用期間・移行率・向いているケース・申請手続きを解説します。

結論: 進路の選択は「労働能力」「対人耐性」「日中の居場所ニーズ」の3軸で考える。A型/B型は「福祉サービス」、就労移行支援は「2年限定の訓練」、一般就労は「労働者として雇用」。同じ「働く」でも法的位置づけがまったく違います。

6つの進路を一目で比較

進路位置づけ労働契約月額収入目安利用期間対象
一般就労雇用(障害者枠含む)あり(雇用保険適用)13-20万円超制限なし労働能力ある
就労移行支援訓練サービスなし(原則無報酬)0-3万円(工賃)原則2年一般就労を目指す
就労継続支援A型雇用型福祉サービスあり(最低賃金適用)8-13万円制限なし一定の労働能力
就労継続支援B型非雇用型福祉サービスなし(工賃のみ)1-2万円制限なし労働能力に課題
生活介護日中活動の場なし工賃ほぼなし制限なし介護必要・重度
自立訓練(生活/機能)訓練サービスなし工賃ほぼなし原則2年生活スキル習得

一般就労(障害者雇用枠含む)

労働基準法・最低賃金法が適用される、通常の雇用契約に基づく就労。障害者雇用枠は法定雇用率(2024年度から民間2.5%、2026年度2.7%予定)の達成のため、企業が積極的に採用しています。賃金は最低賃金以上・雇用保険適用・有給休暇あり。特別支援学校高等部からの一般就労率は約3割で、卒業後すぐより就労移行支援を経由するルートが安定しています。

一般就労のメリット・デメリット

  • メリット: 最低賃金以上・雇用保険・厚生年金・キャリア形成可能
  • メリット: 社会保険完備で親の被扶養から独立しやすい
  • デメリット: 環境変化・対人ストレスが福祉的就労より大きい
  • デメリット: 合理的配慮の質が会社により大きく異なる
  • デメリット: 離職時のセーフティネットが弱い(再就職活動が必要)

就労移行支援 — 「2年で一般就労」を目指す訓練

原則2年間、企業就職を目標として訓練を行う通所型サービス。PCスキル・ビジネスマナー・コミュニケーション訓練・職場実習・就活支援(履歴書・面接練習)・定着支援を提供します。利用料は世帯所得により無料〜37,200円/月上限。事業所により就職率に大差(0-80%)があり、見学時に「過去3年の就職率」「定着率(6ヶ月後)」を必ず数字で確認してください。

就労移行支援は「2年限定」です。期間内に就労に至らないとB型等へ移行することが多く、安易に決めると本人の自己肯定感を削るリスクがあります。事業所の就職実績は事業所ごとの差が極めて大きく、大手チェーンと地域中小事業所では実績が桁違いに違います。

就労継続支援A型 — 雇用契約あり・最低賃金保証

雇用契約を結び最低賃金以上を保証する福祉サービス。一般就労が難しいが一定の労働能力がある方向け。週20時間以上の労働が一般的で、清掃・軽作業・PC作業・カフェ運営などを行います。2024年4月から「生産活動収支で利用者賃金を賄えること」が報酬要件として厳格化され、運営が立ち行かないA型事業所の閉鎖が相次いでいます。事業所選びは慎重に。

就労継続支援B型 — 雇用契約なし・工賃のみ

雇用契約を結ばず「工賃」を支払う非雇用型サービス。最も普及している進路で、特別支援学校卒業後の30-40%が利用しています。労働時間が柔軟(週数時間〜)で、対人耐性や体調変動の大きい方でも継続しやすいのが特徴。全国平均工賃は月17,000円程度(2023年度)で、生活費を稼ぐ場というより「日中の居場所+少額の収入」と捉えるのが現実的です。

A型とB型の選び方

判断軸A型寄りB型寄り
週20時間以上の労働可能困難
対人耐性一定ある低い・波がある
体調安定安定不安定
本人の希望稼ぎたい無理せず通いたい
経済的事情家計の補助必要障害基礎年金中心

生活介護 — 重度・介護必要層の日中活動

常時介護が必要な方の日中活動の場。創作活動・身体機能訓練・生活介助等を提供し、原則として労働の場ではありません。区分3(50歳以上は区分2)以上の障害支援区分が必要。重度知的障害・重症心身障害の方の卒後進路として中心的な選択肢です。

自立訓練(生活訓練/機能訓練)

原則2年間、生活スキル(調理・洗濯・金銭管理・対人スキル)や身体機能訓練を行うサービス。「いきなり一般就労や就労継続支援は不安」という方が、ワンクッション置いて社会生活力を高めるために利用します。卒業後すぐ就労に進まない選択肢として近年注目されています。

進路選択の意思決定フロー

  • 高2前半: 進路希望を本人・家庭・学校で言語化開始
  • 高2後半: 校内実習・職場実習を経験(特別支援学校)
  • 高3前半: 進路候補を3-5箇所に絞り、必ず見学・体験利用
  • 高3夏: 就労移行/A型/B型 利用希望なら受給者証申請(自治体)
  • 高3秋: サービス等利用計画(計画相談)を相談支援事業所で作成
  • 高3卒業時: 4月から利用開始

進路選択で最重要なのは「複数候補を必ず体験すること」。特別支援学校の進路指導だけで決めると、地域の選択肢を見落とします。相談支援事業所のサービス等利用計画は中立な視点で選択肢を提示してくれます。

経済的なシミュレーション

進路本人月収目安障害基礎年金1級(月)障害基礎年金2級(月)世帯月収目安
一般就労(障害者枠)13-20万円約8.6万円約6.9万円20-30万円
就労継続A型8-13万円約8.6万円約6.9万円15-22万円
就労継続B型1-2万円約8.6万円約6.9万円8-11万円
生活介護ほぼなし約8.6万円約6.9万円7-9万円

障害基礎年金は20歳から受給可能。20歳前に発症した障害は所得制限あり。受給には診断書と病歴・就労状況等申立書が必要で、却下事例も少なくないため、社会保険労務士に相談する家庭が増えています。

💡 お子さまが通っている放デイにRootsの導入をリクエスト できます (匿名・無料)。高等部での進路準備・体験実習の様子が保護者LINEで届くようになり、進路選択の判断材料が増えます。

進路を「途中で変える」のはアリか

アリです。B型→A型への移行、A型→一般就労への挑戦、一般就労離職後にB型での再起など、進路は固定ではありません。「最初の進路で失敗した」と思い込まず、サービス等利用計画を見直し続けることが重要です。むしろ「合わなかったら次に行く」前提で進路を選んだ方が、本人にも家族にも余白ができます。

よくある質問

Q. 障害者手帳がなくても就労移行支援は使える?

使えます。医師の診断書・意見書があれば受給者証は申請可能で、手帳必須ではありません。ただし一般就労(障害者雇用枠)は手帳必須です。手帳取得は本人・家族の任意で、進路の選択肢を広げる効果があります。

Q. 就労移行支援を2年使い切ったらどうなる?

原則として再利用は不可ですが、自治体判断で延長(1年)が認められる場合があります。多くはA型/B型に移行するか、自立訓練を挟む形になります。「就職できなかった=失敗」ではなく、訓練で得たスキルは次のステージで活きます。

Q. 大学・専門学校進学はどうか?

近年は発達障害学生支援を充実させた大学が増えています。お茶の水女子大学・筑波大学・東京大学等で支援室が常設されており、合理的配慮(別室受験・板書代筆・チューター制度等)が運用されています。進学+卒後の就労移行支援、というルートも選択肢です。

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参考・引用

  • 厚生労働省 「障害者の就労支援対策の状況」(2024年)
  • 障害者総合支援法 第5条(障害福祉サービス)
  • 厚生労働省 「平均工賃(賃金)の状況」(各年度公表)
  • 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 統計

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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