保護者の方へ・基礎知識

場面緘黙(かんもく)の家庭での関わり方 — 「家では話せるのに」を支えるコツ

家では話せるのに学校や園では一言も話せない「場面緘黙(選択性緘黙)」を保護者向けに解説。DSM-5-TR 基準、CBT・段階的エクスポージャーの考え方、家庭・学校・園での具体的な関わり方、相談先までまとめます。

公開: 2026-05-29読了 約7

場面緘黙(ばめんかんもく、医学用語では選択性緘黙 Selective Mutism)は、「家庭では普通に話せるのに、保育園・幼稚園・学校など特定の場面では一言も話せなくなる」状態です。DSM-5-TR では「不安症群」に分類され、本人の意思で黙っているわけではなく、強い不安により声が出せない状態です。

「人見知りが強いだけ」「そのうち治る」と放置すると、思春期以降も持続し、進学・就労に大きな影響が出ます。早期に気づいて適切な支援を入れることが重要です。

DSM-5-TR の診断基準(概要)

  • 他の状況では話せるのに、特定の社会的状況では話すことが一貫してできない
  • この障害が学業・職業上の成績、社会的コミュニケーションを妨げている
  • 症状の持続が少なくとも1ヶ月以上(入学直後の1ヶ月は除く)
  • 話せないのが、その場面で要求される言語の知識不足や慣れ親しんでいないことによるものではない
  • 他のコミュニケーション障害(吃音など)では説明できない

気づきやすいサイン

  • 家では大声で話すのに、園・学校では先生に挨拶もできない
  • 友達とは家でなら話せるが、学校では筆談・うなずきのみ
  • トイレに行きたいと言えず、漏らしてしまうことがある
  • 体調不良を訴えられない
  • 声が出ないだけでなく、体の動きも固まる(緘動)ことがある
  • 園・学校では表情が乏しく、笑顔も出にくい

原因と背景

原因は単一ではなく、生来の気質(行動抑制の高さ)、不安症の家族歴、社会的状況での強い緊張など複数要因が組み合わさります。「親の育て方が悪い」「過保護が原因」という説には根拠がありません。

家庭での基本的な関わり方

  • 「なぜ話さないの?」「学校で話せた?」と問い詰めない
  • 家で話せる「安全な状態」を肯定し、安心の基地を維持する
  • 緘黙について本人に「あなたが悪いわけではない」と伝える(年齢に応じて)
  • 兄弟が「代わりに話してあげる」状態を続けない(本人の発話機会が減る)
  • 日常の会話の中で「うん」「ううん」など短い発話を肯定的に受け止める
  • 家庭での録音・録画を学校に共有する(本人の声を担任が知る)

園・学校との連携

緘黙の支援は「家庭だけ」「学校だけ」では成り立ちません。担任・養護教諭・スクールカウンセラーと情報を共有し、合理的配慮を設計します。

場面具体的な配慮例
出欠確認声でなくうなずきや手の合図で OK にする
発表事前に紙に書いて先生が代読 / 録音で代用
トイレカードを見せる、肩を叩くなど非言語サインを決めておく
給食「食べられない」を首振りで伝える練習
友達関係少人数(2-3人)の固定メンバーで関わる時間を確保

段階的エクスポージャー(スモールステップ)

緘黙の支援で最もエビデンスがあるのは、認知行動療法(CBT)の枠組みでの段階的エクスポージャーです。「いきなり教室で発表」ではなく、本人が「今ならできそう」と思える小さな一歩を、本人と一緒に決めて積み上げていきます。

  • ステップ1: 学校で家族と話す(下校後の教室、誰もいない時間)
  • ステップ2: 学校で家族 + 担任が同じ部屋にいる中で家族と話す
  • ステップ3: 担任にうなずきで返事する
  • ステップ4: 担任に「うん」「いいえ」の単語で返事する
  • ステップ5: 仲の良い友達1人と非言語で関わる
  • ステップ6: 仲の良い友達1人と単語で会話する
  • ステップ7: 少人数グループで発話する

ステップは本人と相談して決めます。「今日はここまで」と本人が決めた基準を尊重し、できたら必ず承認します。「もう少し頑張れ」と次のステップを押し付けると逆効果です。

専門機関への相談

  • 小児神経科・児童精神科(緘黙を診ている医師に限定推奨)
  • スクールカウンセラー・教育相談センター
  • 発達障害者支援センター
  • かんもくネット(全国の親の会・情報提供)
  • 受給者証を取得して放課後等デイ・児発でソーシャルスキルトレーニングを受ける

やってはいけない関わり

  • 「話しなさい」「声を出して」と強要する
  • 人前で「この子は緘黙で…」と説明する(本人の前で)
  • 話せたら大げさに褒める(プレッシャーになる)
  • 兄弟と比較する
  • 「家ではこんなに話すのに」と先生に愚痴る(本人が聞いている)

Roots を導入している事業所では、家庭・学校・放デイ間で緘黙のステップ進捗を共有でき、本人にとっての「話せる場所」を増やす連携支援が可能です。

思春期以降への展望

小学校低学年で介入を始めると、卒業までに大幅な改善が見られるケースが多いです。中学校以降の介入では、発話よりも「進学・就労で困らない選択肢を本人と一緒に持つ」ことが現実的なゴールになります。通信制高校・少人数制の学校・在宅で完結する就労など、選択肢は広がっています。

緘黙のある子の段階的な支援を進めたい方は、Roots 導入の放デイにリクエストできます

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参考・引用

  • American Psychiatric Association (2022) DSM-5-TR — 選択性緘黙(Selective Mutism)
  • かんもくネット「場面緘黙 Q&A」
  • Bergman, R. L. (2013) Treatment for Children with Selective Mutism
  • 日本不安症学会
  • 国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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