保護者の方へ・行政手続き
障害児福祉手当の併給可否ガイド — 特児・児童手当・年金との関係を整理
障害児福祉手当(月額15,690円)の対象範囲・認定基準・申請方法を解説。特別児童扶養手当、児童手当、20歳前障害基礎年金との併給可否を表で整理。受給漏れを防ぐためのチェックリスト付き。
障害児福祉手当は20歳未満の重度障害児本人に支給される手当です(2024年度 月額15,690円)。特別児童扶養手当が「保護者宛」なのに対し、障害児福祉手当は「障害児本人宛」(実際には保護者が管理する口座に振込)という違いがあります。年間188,280円の追加支給につながりますが、「他制度との併給可否」が複雑で混乱しがち。本記事では併給ルールを徹底整理します。
障害児福祉手当は重度認定のみが対象です。療育手帳B(軽度・中度)単独では原則対象外。最重度の心身障害・医療的ケア児等が主な対象となります。
障害児福祉手当とは
20歳未満で「精神又は身体に重度の障害があり、日常生活に常時介護を必要とする」児童に支給される国制度です。根拠法は「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」第17条。窓口は市区町村の障害福祉課。
支給額(2024年度)
| 区分 | 月額 | 年間額 | 支給時期 |
|---|---|---|---|
| 障害児福祉手当 | 15,690円 | 188,280円 | 2月・5月・8月・11月(年4回) |
認定基準 — 「重度」とは何か
認定基準は厚生労働省告示「障害児福祉手当の障害程度認定基準」で詳細に定められています。代表例を挙げると以下のとおり。
対象となる障害程度の例
- 【視覚】 両眼の視力の和が0.04以下
- 【聴覚】 両耳の聴力レベルが100dB以上
- 【肢体】 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 【肢体】 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
- 【内臓】 心臓・じん臓・呼吸器の機能の障害により安静時にも常時介助を要する
- 【知的】 知的障害がきわめて重度(目安IQ20以下)で常時介護を要する
- 【精神】 統合失調症・気分障害等で常時介護を要する
- 【複合】 上記障害が重複し常時介護を要する
単一の障害ではなく「複数の障害の重複」も認定対象です。「中度知的障害+てんかん+身辺自立困難」のような複合状態でも認定されるケースがあります。
他制度との併給可否一覧
障害児福祉手当を受給するにあたって、他の手当・年金との併給可否は最重要ポイントです。表で整理します。
| 併給する手当・制度 | 併給可否 | 注意点 |
|---|---|---|
| 特別児童扶養手当 | ○ 併給可 | 完全に別制度。両方受給可 |
| 児童手当 | ○ 併給可 | 完全に別制度。両方受給可 |
| 20歳前障害基礎年金 | × 不可(支給停止) | 20歳到達で年金切替 |
| 障害基礎年金(20歳以降) | × 不可 | 本人20歳到達で福祉手当は終了 |
| 特別障害者手当 | × 不可 | 対象年齢が異なる(20歳以上) |
| 生活保護 | △ 部分的併給 | 手当額が生活保護費から控除される |
| 自立支援医療(育成医療) | ○ 併給可 | 医療費助成で別制度 |
| 療育手帳・身体障害者手帳 | ○ 併給可 | 手帳と手当は別物 |
重要: 特別児童扶養手当(月55,350円/36,860円)と障害児福祉手当(月15,690円)はフル併給可能。重度の児童は「特児1級 + 福祉手当」で月7万円超の支給を受けられます。年間84万円相当。
所得制限
障害児福祉手当にも所得制限があります。本人・配偶者・扶養義務者の所得が制限額を超える場合、支給停止になります。
| 扶養親族数 | 本人 所得限度額 | 配偶者・扶養義務者 所得限度額 |
|---|---|---|
| 0人 | 3,604,000円 | 6,287,000円 |
| 1人 | 3,984,000円 | 6,536,000円 |
| 2人 | 4,364,000円 | 6,749,000円 |
| 3人 | 4,744,000円 | 6,962,000円 |
| 4人以上 | 1人増ごとに+38万円 | 1人増ごとに+21.3万円 |
所得制限は特別児童扶養手当より厳しい設定になっています。年収700万円超の世帯は支給対象外となる可能性が高いです。
申請手順
【ステップ1】市区町村 障害福祉課で申請書類を入手
「障害児福祉手当認定請求書」と「診断書様式」を入手します。診断書は障害種別ごとに様式が分かれているため、対象児童の主たる障害に応じた様式を取得してください。
【ステップ2】指定医師に診断書を依頼
指定医療機関の医師に診断書記入を依頼します。文書料は5,000〜10,000円。診断書は「日常生活に常時介護を要する状態」が明確に記載されることが必須。具体的な介助内容(食事・排泄・着替え・移動の各場面)が詳述されるよう、保護者から困りごとを整理して渡しましょう。
【ステップ3】市区町村窓口で申請
- 認定請求書
- 診断書(原本・作成2ヶ月以内)
- 請求者と児童の戸籍謄本(本籍地が異なる場合)
- 住民票(世帯全員・続柄記載)
- 振込口座が分かる通帳
- マイナンバー確認書類
- 所得証明書(他自治体から転入の場合)
- 療育手帳・身体障害者手帳の写し
【ステップ4】審査(2〜3ヶ月)
都道府県が審査。認定通知後、申請月の翌月分から支給対象になります。支給は2月・5月・8月・11月の年4回。
医療的ケア児は要件確認を
気管切開・胃ろう・人工呼吸器使用・喀痰吸引等が必要な医療的ケア児は、ほぼ確実に認定対象です。診断書で「医療的ケア(具体的内容・実施回数・実施時間)」を明記してもらうことが認定のポイント。医療的ケア児支援センターで申請サポートを受けられる自治体も増えています。在宅で医療的ケアを行う場合の介護負担量は健常児の20倍以上とされ、保護者の就労や睡眠時間を著しく圧迫します。本手当は重度心身障害児の在宅生活を経済的に下支えする極めて重要な制度であり、対象に該当する可能性があれば必ず申請しましょう。診断書記入の段階で、24時間中の医療的ケア実施回数を時系列で記録した「ケアダイアリー」を主治医に渡すと、診断書の内容が現実に即したものになり認定確度が上がります。
20歳到達時の切替手続き
障害児福祉手当は20歳到達月で終了し、20歳以降は「特別障害者手当(月28,840円)」または「障害基礎年金」に切替えます。19歳の誕生月から準備を開始し、ブランク無しで切替えるのが理想です。
20歳以降の制度比較
| 制度 | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| 特別障害者手当 | 28,840円 | 在宅の最重度障害者向け。所得制限あり |
| 障害基礎年金1級 | 85,000円 | 20歳前傷病で受給可能 |
| 障害基礎年金2級 | 68,000円 | 20歳前傷病で受給可能 |
20歳前障害基礎年金と特別障害者手当は併給可能です。年金1級+特障手当で月約114,000円。重度児は20歳到達前から年金準備を進めるべき。
実例: 医療的ケア児ケース(人工呼吸器装着3歳)
Cちゃん(3歳・脳性麻痺・人工呼吸器装着・経管栄養): 障害児福祉手当(月15,690円) + 特別児童扶養手当1級(月55,350円) + 児童手当(月15,000円) = 月86,040円。年間103万円超の手当を受給。さらに自立支援医療・小慢で医療費はほぼゼロ、自治体マル子で受診1回数百円。
💡 通所中のお子さまが医療的ケア児の場合、事業所の看護師・児発管に書類準備サポートを相談できます。診断書記入の優先項目を一緒に整理してもらえることが多いです。
受給漏れ防止チェックリスト
- □ 児童手当(月10,000-15,000円・全員対象)を受給している
- □ 自治体の子ども医療証(マル乳/マル子/マル福)を取得している
- □ 療育手帳または身体障害者手帳の申請をしている
- □ 特別児童扶養手当(中度〜)の申請をしている
- □ 障害児福祉手当(重度のみ・本記事)の申請をしている
- □ 自立支援医療(育成医療)で医療費を軽減している
- □ 小児慢性特定疾病(該当疾病あれば)の医療費助成を受けている
- □ 自治体独自の手当(在宅心身障害児手当等)を確認している
- □ 受給者証の有効期限を管理している
- □ 年1回の現況届を8月までに提出している
よくある質問
Q. 障害児福祉手当と特別児童扶養手当 — どちらを先に申請すべき?
同時申請をおすすめします。診断書様式は別ですが、市区町村窓口で「両方申請したい」と伝えれば一括で案内してもらえます。同じ通院機会で2枚の診断書を取得すれば文書料・通院回数を節約できます。
Q. 児童が施設に入所中でも受給できますか?
原則として施設入所中は支給停止です。理由は「常時介護を施設が担っているため」。ただし短期入所(ショートステイ)や通所利用(児発・放デイ)は対象外ではなく、引き続き支給対象になります。
Q. 認定された後、症状が軽くなったら返納が必要ですか?
症状が軽快し、認定基準を下回った場合は受給資格喪失届を提出します。提出せず受給を続けると「不正受給」として返還請求と加算金課税の対象になり得ます。状態変化があれば速やかに窓口へ連絡を。
医療費助成の組み合わせを詳しく知る
障害児の医療費完全ガイド