制度・学術
中核機能強化加算 [令和8年度新設] — 児童発達支援センターの中核機能を担う事業所への加算
令和8年度報酬改定で新設が検討されている「中核機能強化加算」の制度趣旨、地域の中核機能(スーパーバイズ・困難ケース受入・地域支援)の評価軸、想定単位数、児童発達支援センターとの関係を経営者目線で整理。
令和4年児童福祉法改正により、児童発達支援センターは地域の障害児支援の「中核機能」を担う位置づけが法律上明確化されました。これを受けて、こども家庭庁は令和8年度報酬改定で「中核機能強化加算」(仮称)の創設を検討しています。本記事では現時点で議論されている要件・想定単位数・経営インパクトを整理し、加算取得を視野に入れた事業所がいま準備すべきことをまとめます。
本記事は2026年5月時点の検討状況を整理したものです。最終的な要件・単位数は厚生労働省・こども家庭庁の正式告示に基づきます。
中核機能とは何か — 児童福祉法上の位置づけ
児童福祉法第43条は児童発達支援センターを「地域における障害児支援の中核的な役割を担う施設」と規定しています。令和4年改正(令和6年4月施行)で、児発センターは従来の「福祉型・医療型」の区分を一元化したうえで、4つの中核機能を担うことが明文化されました。
- ①幅広い高度な専門性に基づく発達支援・家族支援機能
- ②地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズ・コンサルテーション機能
- ③地域のインクルージョン推進の中核機能(保育所等訪問支援等)
- ④地域の発達支援に関する入口としての相談機能
なぜ「強化加算」が必要か
法律上「中核機能を担う」と位置づけられたものの、実態として児童発達支援センターが地域の他事業所への助言・困難ケース受入・地域連携会議の主催等を行うインセンティブは弱く、令和6年度改定後の運用実態調査では「中核機能の実装が進んでいない」との指摘が相次ぎました。これを受けて、こども家庭庁は「機能を実際に発揮しているセンター」を報酬上で明確に評価する方向性を示しています。
想定される算定要件(検討中)
| 要件区分 | 想定される内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象事業所 | 児童発達支援センターのみ(指定を受けたもの) | 一般の児発・放デイは対象外 |
| 人員要件 | 児発管+保育士+児童指導員に加え、PT/OT/ST/心理職のいずれかを常勤配置 | 専門職複数配置が想定 |
| 機能要件① | 地域事業所への助言・SV実績(年◯件以上、記録残存) | スーパーバイズ機能 |
| 機能要件② | 困難ケース(強度行動障害・医ケア児等)の受入実績 | 受入実績の数値要件あり |
| 機能要件③ | 保育所等訪問支援の実施事業所であること | インクルージョン推進機能 |
| 機能要件④ | 地域自立支援協議会・子ども部会への参加 | 地域連携への関与 |
想定単位数とインパクト
加算単位数は最終告示まで確定しませんが、検討会資料・既存類似加算(地域包括ケアの中核機能加算等)を踏まえると、月額固定型で1事業所あたり月数万円〜十数万円、もしくは利用児童1人あたり1日数十単位という構造が想定されます。年間収入インパクトで100-300万円規模になる可能性があります。
中核機能強化加算は「センター指定を持っている事業所」が対象です。一般の児発・放デイは対象外のため、加算取得を狙う場合はまず児発センターへの転換指定取得が前提となります。
関連する既存加算との関係
| 加算名 | 対象 | 中核機能強化加算との関係 |
|---|---|---|
| 関係機関連携加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | 児発・放デイ全般 | 個別連携の評価。中核加算は地域全体の中核機能を評価 |
| インクルージョン推進加算 | 児発・放デイ全般 | 保育所等訪問の実施を評価。中核加算ではこれを必須要件化 |
| 専門的支援体制加算・実施加算 | 児発・放デイ全般 | 専門職配置の評価。中核加算では複数配置を要件化 |
| 集中的支援加算 | 強度行動障害児対応 | 困難ケース受入の評価。中核加算では受入実績を要件化 |
加算取得を狙う事業所が今すぐ準備すべきこと
- 【最優先】児童発達支援センターへの転換指定の検討(管轄自治体との事前協議)
- 専門職(PT/OT/ST/公認心理師)の複数配置体制構築(常勤化または業務委託)
- 地域事業所からの相談・SV依頼の受入実績の記録化(日付・依頼元・内容・対応者)
- 困難ケース(強度行動障害・医ケア児)の受入実績の整理
- 保育所等訪問支援事業の指定取得(未取得の場合)
- 地域自立支援協議会・子ども部会への定期参加と議事録の保管
センター転換のハードル
中核機能強化加算は経営インパクトが大きい一方、対象がセンター指定事業所に限定される見込みのため、まず「センター転換」が第一関門となります。センター転換には(1)定員概ね30名以上、(2)複数機能(児発+保育所等訪問支援+相談支援)の併設、(3)専門職複数配置、という構造要件があり、既存の児発単機能事業所からの転換は人員・設備・財務すべてのリプランニングが必要です。
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経営判断としての中核機能戦略
すべての児発・放デイがセンター転換を狙うべきではありません。地域の児発センター数が不足しているエリア(特に多摩地域・地方都市の中心部)では、転換を狙う合理性が高いですが、すでにセンターが充足している地域では、専門特化型(強度行動障害特化・医ケア児特化等)で差別化する方が現実的です。中核機能強化加算は「狙う事業所と狙わない事業所」が明確に分かれる加算になる見込みです。
情報源の追い方
- こども家庭庁「障害児通所支援に関する検討会」資料 — 中核機能の議論経緯
- 社会保障審議会 障害者部会 議事録 — 加算化の最新議論
- 全国児童発達支援協議会(CDS-Japan) — 業界団体からの提言
- 管轄自治体の障害福祉計画 — 地域のセンター整備方針