制度・学術

処遇改善加算 実績報告書の記入例と提出期限|児発・放デイ

処遇改善加算の実績報告書について、賃金改善額の書き方・職場環境要件の実施記録・提出期限(7月末目安)を記入例つきで整理しました。計画額と実績額の不一致による差額返戻を防ぐ確認手順、令和8年6月改定の上位区分にも触れています。様式と締切の最終確認は所管自治体へ。

公開: 2026-07-15読了 約9

処遇改善加算の実績報告書は、その年度に受け取った加算収入額と、実際に職員へ配分した賃金改善額を突き合わせて所管自治体へ報告する書類です。提出して終わりの事務ではなく、計画額と実績額の対応が説明できないと差額返戻の対象になり得ます。この記事では、児発・放デイの事業所を想定して、賃金改善額の書き方・職場環境要件の実施記録・提出期限(多くの自治体で7月末が目安)を記入例つきで整理します。制度の全体像は別記事の「処遇改善加算 完全ガイド」に譲り、ここでは実績報告書の記入実務に絞ります。

実績報告書の未提出・期限超過や、賃金改善額が加算収入額に満たない状態は、既に支払われた加算の返還につながる場合があります。差額返戻を「起きてから対応する」のではなく、報告書作成の段階で防ぐことがこの記事の主眼です。

処遇改善加算の実績報告書とは(提出時期と目安)

実績報告書は、厚生労働省の様式例では「別紙様式3」に相当します。賃金改善実績や職場環境等要件の取組状況、加算収入額と賃金改善額の対応を記載し、年度単位(4月1日〜翌3月31日)の結果をまとめます。処遇改善加算を1つでも算定した事業所は、年度末の実績報告が前提です。

提出期限は、最終加算支払月の翌々月末とする自治体が多く、前年度分については7月31日を目安に設定されている例が見られます。ただし様式番号・締切・提出方法(電子申請かどうか)は指定権者ごとに異なります。児発・放デイの指定権者は都道府県・指定都市・中核市で、たとえば東京都は電子申請での提出を求めています。ご自身の所管自治体の案内で必ず確認してください。

「実績報告書を期限内に提出しない」と、加算の停止や既支給分の返還につながる場合があります。逆に言えば、期限管理と記入の整合を押さえれば防げるリスクです。締切は年度当初にカレンダーへ登録しておくのが安全です。

賃金改善額の記入例(計画額と実績額の対応)

実績報告書で最も確認されるのは、加算収入額と賃金改善額の対応です。基本の考え方は「賃金改善に要した額が、その年度に受け取った加算収入額を下回らないこと」。下回ると充当不足となり、差額返戻の対象になり得ます。まず年間の加算収入額を請求確定額から拾い、次に基本給・毎月の手当・賞与など改善の内訳を積み上げて対応させます。

項目計画額(年度当初)実績額(年度末)確認の観点
加算収入額(年間)見込み額請求確定額の合計請求実績から拾い、見込みとのズレを把握
基本給の改善配分予定実支給の増額分毎月固定分として月給改善に充てた額
毎月の手当配分予定実支給の増額分処遇改善手当等、毎月支給した固定手当
賞与・一時金配分予定実支給の増額分月給改善で不足する分を補う位置づけ
賃金改善額 合計計画合計実績合計実績合計 ≧ 加算収入額 を確認

記入のポイントは3つです。第一に、賃金改善額の合計が加算収入額以上であること。第二に、月額賃金改善要件として、基本給または毎月固定の手当(=月給・ベースアップ)への配分が一定以上あること。賞与・一時金のみでの改善は認められないとされており、月給への配分と賞与等の配分を分けて記載します。第三に、計画額(別紙様式2)と実績額を同じ職員区分・同じ内訳で対応させ、差が出た理由を説明できるようにしておくことです。

対象職員の範囲を広げすぎると過大算定につながります。専従の管理者や、支援業務に関わらない事務員、法人本部の職員は原則として対象外です(令和8年6月以降は対象範囲が障害福祉従事者全体へ拡大しており、役員は実際にサービス提供業務を行っているかで判定します)。対象・非対象の線引きは計画書と実績報告書で一致させてください。

職場環境要件の実施記録の書き方

職場環境等要件は、区分に応じた数の取組を「実施したこと」が求められます。実績報告書では、どの項目を実施したかに加えて、実施を裏づける記録が示せるかが重要です。障害福祉版の職場環境等要件は6区分28項目で構成され、①入職促進、②資質向上、③両立支援、④心身の健康管理、⑤生産性向上、⑥やりがいの醸成に分かれます。

令和8年6月以降の必要数は、加算Ⅰ・Ⅱが「区分ごとに2つ以上(生産性向上は3つ以上)かつ全体で14以上」、加算Ⅲ・Ⅳが「区分ごとに1つ以上(生産性向上は2つ以上)かつ全体で8以上」とされています。上位区分「ロ」では、生産性向上の取組から一定数の実施と、現場課題の見える化・業務支援ソフト+情報端末の導入などが必須の位置づけです。区分ごとの必要数と項番の対応は所管自治体の様式で確認してください。

区分の例取組の例証跡として残すもの
②資質向上研修費補助・資格取得支援・研修計画の実施研修計画・出席簿・受講記録・費用の支出記録
③両立支援育休・短時間勤務制度の整備と運用就業規則・制度利用の記録
④心身の健康管理健康診断費補助・ストレスチェック実施記録・受診記録
⑤生産性向上業務支援ソフト・情報端末の導入、業務の見える化導入契約・運用状況・改善前後の記録
⑥やりがいの醸成キャリア面談・表彰の実施面談記録・実施記録

記入の実務では、「実施した」とチェックするだけでなく、後から運営指導で確認を求められても提示できる記録を紐づけておくことが要点です。研修であれば出席簿と計画、面談であれば面談記録、ICT導入であれば導入と運用の記録、といった具合に、項目ごとに証跡の所在を整理しておくと、実績報告書の記載と実態が一致します。

差額返戻を防ぐ確認手順(不一致が起きる典型)

差額返戻の多くは、計画額と実績額の不一致から生じます。年度途中で加算収入額が計画時の見込みからずれる(利用実績や区分変更で増減する)ことは珍しくありません。加算収入が見込みより増えたのに賃金改善額を据え置くと、年度末に充当不足になります。次の順で確認すると、報告前に不一致を潰せます。

  • 【1】年間の加算収入額を請求確定額から確定させる(見込みではなく実績で)
  • 【2】年度の賃金改善額(基本給・毎月の手当・賞与等)を実支給ベースで集計する
  • 【3】賃金改善額 ≧ 加算収入額 を確認する。不足が見込まれる場合は、年度内の賞与等で補填して差を埋める
  • 【4】月給(基本給+毎月固定手当)への配分が月額賃金改善要件を満たしているかを確認する
  • 【5】対象職員の範囲が計画書と一致しているか(管理者・本部職員を誤って含めていないか)を確認する
  • 【6】職場環境等要件の実施記録が、区分ごとに必要数そろっているかを確認する

賃金改善額が加算収入額に満たない「充当不足」は、最悪の場合、既に支給された加算の全額返還につながり得るとされています(自治体の公表事例)。年度内に賞与等で補填すれば回避できる場合があるため、年度末を待たず、四半期など早い段階で累計を突き合わせるのが安全です。

令和8年6月改定の反映(上位区分・新率での実績)

令和8年6月1日施行の改定で、処遇改善加算は加算Ⅰ・Ⅱに上位区分「ロ」が新設され、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳの6区分になりました。根拠は令和8年こども家庭庁告示第5号です。年度をまたいで率が切り替わる場合、実績報告では6月分から新率が適用され、期間ごとに率が異なる点に注意します(月割りではなく提供月基準で切り替わります)。

区分(児発の例)令和6年6月〜令和8年5月令和8年6月〜
加算Ⅰ / Ⅰイ13.1%15.2%
加算Ⅰロ(令和8年6月新設)15.8%
加算Ⅱ / Ⅱイ12.8%14.9%
加算Ⅱロ(令和8年6月新設)15.5%
加算Ⅲ11.8%13.9%
加算Ⅳ9.6%11.7%

上の率は児童発達支援の例で、放課後等デイサービスは別の率です(たとえば放デイのⅠイは令和8年6月から15.5%)。地域区分・サービス種別で単価が変わるため、加算収入額は自事業所の請求実績から拾うのが確実です。上位区分「ロ」では、加算Ⅱロ相当額の一定割合を月給へ配分することや、生産性向上の取組の実施・情報公表システムでの公表が要件に加わるため、実績報告でもこれらを満たした記録が必要になります。

返戻の典型に「加算率の適用期間の取り違え」があります。令和6年の旧区分の率と、令和8年6月からの新6区分の率を混同すると、実績報告の加算収入額がずれます。期間ごとに率を分けて計算しているかを確認してください。

提出前チェックリスト

  • 賃金改善額の合計 ≧ 年間の加算収入額(請求確定額ベース)になっているか
  • 月給(基本給+毎月固定手当)への配分が月額賃金改善要件を満たしているか(賞与のみになっていないか)
  • 対象職員の範囲が計画書(別紙様式2)と一致しているか
  • 職場環境等要件が区分ごとに必要数そろい、実施記録(出席簿・面談記録・導入記録等)が示せるか
  • 令和8年6月をまたぐ場合、期間ごとに率を分けて加算収入額を計算しているか
  • 様式番号・提出期限・提出方法(電子申請の要否)を所管自治体の案内で確認したか

ROOTS のスタンダードプランでは、加算届出・処遇改善の職員別配分・国保連請求を一つの画面で扱えます。年間の加算収入額(請求確定)と賃金改善額の累計を突き合わせ、充当不足を早めに把握する運用に役立てられます。書類は自動で整形しますが、提出と最終判断はご自身で行ってください。

実績報告書は、加算収入額と賃金改善額の対応、職場環境等要件の実施記録という2つの柱を、計画書と一致させて記載することが要点です。差額返戻の多くは、途中の収入増に配分が追いつかない不一致から起きるため、年度末を待たず累計を突き合わせておくと防ぎやすくなります。制度の全体像や区分別の要件は別記事の「処遇改善加算 完全ガイド」を、実務のチェックはこの記事を、それぞれの用途で使い分けてください。

本記事は令和8年こども家庭庁告示第5号および厚生労働省の様式例(別紙様式2〜5)、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に基づく一般的な解説です。様式番号・締切・受理の可否は自治体によって異なる場合があります。様式・締切・受理の最終確認は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)・所管自治体へ行ってください。

参考・引用

  • 令和8年こども家庭庁告示第5号(福祉・介護職員等処遇改善加算に係る基準)
  • 厚生労働省「福祉・介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」(別紙様式2〜5)
  • 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(こども家庭庁・厚生労働省)

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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