制度・学術
強度行動障害児支援加算 運用ガイド — 算定要件・支援計画書・記録運用を現場目線で(令和6年度改定後)
令和6年度改定で見直された「強度行動障害児支援加算」と「集中的支援加算」の算定要件、判定基準(行動関連項目10点以上)、強度行動障害支援者養成研修(基礎/実践)修了の必要性、個別支援計画書・記録運用、実地指導での確認ポイントを現場目線で実務的に解説。
強度行動障害児支援加算は、行動関連項目10点以上の児童を受け入れた事業所において、強度行動障害支援者養成研修を修了した職員が個別支援を行った場合に算定できる加算です。令和6年度改定では加算単位数の引上げと、集中的支援加算の新設により、強度行動障害への支援体制を整える事業所への報酬評価が大幅に強化されました。本稿で要件・運用・記録まで実務的に整理します。
本記事は令和6年度報酬改定後(令和6年4月以降)の現行制度に基づきます。地域単価(地域区分)による換算は管轄自治体の運用に従ってください。
強度行動障害児支援加算とは
強度行動障害児支援加算は、児童発達支援・放課後等デイサービスにおいて、「行動関連項目の合計点数が10点以上の児童」を受け入れた場合に、所定の研修修了者の配置を条件として算定できる加算です。自傷・他害・睡眠の乱れ・著しい多動等が継続的に見られる児童への専門的支援を評価する加算で、児童1人ごとに算定します。
令和6年度改定後の単位数
| 加算名 | 対象 | 単位数 | 算定単位 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 強度行動障害児支援加算 | 行動関連項目10点以上の児童 | 200単位/日 | 児童1人1日につき | 令和6年度改定で引上げ(改定前155単位) |
| 集中的支援加算(令和6年度新設) | 特に支援困難な行動障害児 | +1,000単位/日(算定上限あり) | 児童1人1日につき | 上限90日/年・専門家チーム関与必須 |
※強度行動障害児支援加算(200単位)+集中的支援加算(1,000単位)を併算定すると、1日あたり1,200単位の加算となり、地域単価10円換算で1日12,000円・年間90日上限で108万円のインパクトとなります。経営的にもインパクトの大きい加算群です。
対象児童の判定 — 行動関連項目10点以上とは
「行動関連項目」は障害支援区分認定調査票の中で、児童の行動上の課題を11項目に分けて評価する指標群です。各項目を0〜2点で評価し、合計点で支援必要度を判定します。10点以上で「強度行動障害」相当とされ、本加算の対象となります。
| 項目 | 評価軸 | 配点 |
|---|---|---|
| コミュニケーション | 意思疎通の困難さ | 0〜2点 |
| 説明の理解 | 指示・説明の理解度 | 0〜2点 |
| 大声・奇声を出す | 頻度・強度 | 0〜2点 |
| 異食行動 | 食べ物以外を口にする | 0〜2点 |
| 多動・行動停止 | 落ち着きのなさ・固まり | 0〜2点 |
| 不安定な行動 | 感情の起伏 | 0〜2点 |
| 自らを傷つける行為 | 自傷の頻度・強度 | 0〜2点 |
| 他人を傷つける行為 | 他害の頻度・強度 | 0〜2点 |
| 不適切な行為 | 社会的に不適切な行動 | 0〜2点 |
| 突発的な行動 | 予測不能な行動 | 0〜2点 |
| 過食・反すう等 | 食行動の問題 | 0〜2点 |
判定スコアは「障害児支援利用計画」や「受給者証」の記載をもとに確認します。市町村によって判定の運用が異なるため、新規受入時には受給者証の記載確認+保護者ヒアリング+市町村への確認の3点セットで対象児童かどうかを判定してください。
研修修了要件 — 基礎研修・実践研修
強度行動障害児支援加算を算定するには、「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修または実践研修)を修了した職員」を事業所に配置する必要があります。研修は都道府県(または委託先)が実施しており、修了証の写しを事業所で保管します。
| 研修 | 時間 | 内容 | 本加算上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 基礎研修 | 12時間(2日間) | 強度行動障害の理解・基本的な支援技法 | 加算算定の最低要件 |
| 実践研修 | 12時間(2日間) | 個別支援計画作成・行動分析・チームアプローチ | 集中的支援加算等の上位要件 |
- 基礎研修修了者が事業所に1名以上配置されていることが原則要件
- 常勤・非常勤は問わない(配置時間の根拠記録は必要)
- 修了証の写しは事業所で保管(実地指導での確認対象)
- 研修受講中の職員は要件を満たさない(修了後に算定開始)
集中的支援加算(令和6年度新設)の詳細
集中的支援加算は、強度行動障害の中でも特に支援困難なケース(他害・自傷が重度で、通常の支援では対応が困難)に対し、専門家チームの関与のもとで集中的な行動分析・環境調整・スタッフ研修を実施する場合に算定できる新設加算です。算定上限は1児童あたり年90日まで。
- 【対象】行動関連項目10点以上のうち、特に支援困難と認められる児童
- 【専門家関与】広域的支援人材(都道府県の指定する強度行動障害支援者人材)または児童発達支援センターの専門家チームの関与
- 【期間】最大90日/年(連続でも分割でも可)
- 【計画】集中的支援計画書の作成(個別支援計画とは別建ての専門計画)
- 【記録】日次の行動記録・支援内容・効果測定
集中的支援加算は専門家チームの関与が必須のため、自前で完結する加算ではありません。都道府県の広域的支援拠点・児童発達支援センター・大学の発達支援研究室等と事前に連携体制を構築しておくことが算定のための前提条件になります。
個別支援計画書 — 強度行動障害児用の作成ポイント
- 【行動アセスメント】対象行動の種類・頻度・強度・きっかけ(ABC分析)を記載
- 【支援目標】短期目標(3ヶ月)+中期目標(6ヶ月)の二段構え
- 【支援方法】構造化(視覚支援・スケジュール提示)・代替行動の指導・環境調整
- 【スタッフ役割】基礎研修修了者を中心としたチーム編成・役割分担
- 【評価指標】対象行動の頻度・強度の数値化(週次・月次の定量記録)
- 【家族との共有】家庭での支援方針すり合わせの記録
日次の行動記録 — 実地指導での主要確認対象
強度行動障害児支援加算の実地指導では、「対象行動の日次記録」がほぼ必ず確認されます。記録不備で加算を返還した事例も全国で複数報告されており、記録運用は最重要論点です。理想は「対象行動が発生した時刻・状況(A)・行動(B)・結果(C)・スタッフ対応・効果」を時系列で残すABC記録です。
- 日次記録(対象行動の発生時刻・頻度・強度)
- ABC分析シート(きっかけ→行動→結果)
- 支援者の対応記録(実施した支援内容)
- 週次サマリ(行動傾向の変化)
- 月次評価(目標達成度・計画見直し要否)
実地指導でよく指摘される論点
- 基礎研修修了者の配置時間が、加算算定日の児童来所時間と整合していない
- 個別支援計画書に強度行動障害向けの専門的支援内容が記載されていない(汎用テンプレのまま)
- 日次の行動記録がなく、加算算定の根拠が見えない
- 対象児童の行動関連項目スコアの確認資料がない
- 集中的支援加算で90日上限を超えて算定している
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受入体制の構築 — 事業所として整えるべき要素
- 基礎研修修了者の確保(最低1名、できれば2-3名)
- 実践研修修了者の育成(集中的支援加算を狙う場合は必須)
- 物理的環境(クールダウン用個室・視覚支援ツール・落下物リスク低減)
- 支援チーム編成(強度行動障害児には1対1配置に近い体制)
- 広域的支援人材・児童発達支援センターとの連携協定
- 保護者との同意書(行動制限・身体拘束に関するルール)
経営面のインパクトと注意点
強度行動障害児支援加算は単価が大きい一方、支援体制の構築コスト(研修受講・職員配置増・物理環境整備)も高い加算です。受入児童数が増えるほど人員配置が厳しくなり、職員疲弊・離職リスクも上昇します。「何人まで受入可能か」を経営判断として明確にし、職員研修・チームケア体制を継続的に整備することが運営継続の必須条件です。
まとめ — 専門特化のチャンスと責任
強度行動障害児支援加算は、(1)単価が大きい、(2)対象児童が地域に必ず存在する、(3)受入事業所が不足している、という3条件がそろっているため、専門特化型の事業所には大きな経営チャンスです。一方で支援困難ケースであるが故に、職員のスキル・チームケア・記録運用が一気通貫で整わないと、事故・職員離職・実地指導での返還リスクに直結します。基礎研修→実践研修→集中的支援の3段階で体制を計画的に構築する道筋を描いてください。