保護者の方へ・行政手続き
障害者手帳と療育手帳の使い分け — どっちを取る? 両方持てる?
身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3種類を、対象・判定基準・取得メリット・更新ルールで完全比較。発達障害児は精神手帳? 療育手帳? 両方取れる? 学校・就職への影響まで保護者目線で解説します。
「療育手帳と障害者手帳って何が違うの?」「うちの子はADHDなんだけど、どっちを取ればいいの?」「両方持ってる人もいるって聞いたけど本当?」。発達に課題のあるお子さまの保護者からよく寄せられる質問です。実はこれらは別の制度であり、対象や用途が異なります。本記事では3種類の手帳を完全比較し、どれを取るべきかの判断軸を解説します。
結論: 知的障害なら療育手帳、発達障害(ASD・ADHD・LD)単独なら精神障害者保健福祉手帳、身体機能の障害なら身体障害者手帳。重複する場合は2種類の手帳を同時取得することも可能で、それぞれ違うメリットを享受できます。
3種類の手帳の全体像
まず、日本の障害者手帳には3種類あり、それぞれ根拠法・対象・判定機関が違います。「障害者手帳」というのは3種類の総称として使われることもあれば、身体障害者手帳のみを指すこともあります。
| 手帳名 | 対象 | 根拠法 | 判定機関 | 更新 |
|---|---|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 身体機能の永続的障害(視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害等) | 身体障害者福祉法 | 指定医師の診断+自治体審査 | 原則なし(再認定が必要な場合あり) |
| 療育手帳 | 知的障害(発達期に発生) | 療育手帳制度要綱(国の通知) | 児童相談所・知的障害者更生相談所 | 原則あり(再判定 2〜10年ごと) |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害(統合失調症・うつ・発達障害・てんかん等) | 精神保健福祉法 | 医師の診断書+自治体審査 | 2年ごとに更新 |
療育手帳 — 知的障害の証明
療育手帳は「知的障害がある」ことを公的に証明する手帳です。実は療育手帳は国の法律ではなく、各都道府県・政令市の要綱で運用されているため、判定基準・等級表記が地域によって少し異なります。
判定基準(おおまかな目安)
- 重度(A・○A・1度): IQ概ね35以下
- 中度(B・B1・2度): IQ概ね36-50
- 軽度(C・B2・3度・4度): IQ概ね51-75
- 18歳未満で発症した知的発達の遅れ+社会適応の困難
主なメリット
- 所得税・住民税の障害者控除(27〜75万円)
- 自動車税・自動車取得税の減免
- JR・バス・タクシー運賃の割引(本人+介護者)
- 公共施設・遊園地の入場料割引
- 障害基礎年金の請求(20歳到達時)
- 将来の就労支援・グループホーム等の福祉サービス利用
精神障害者保健福祉手帳 — 発達障害の証明
発達障害(ASD・ADHD・LD)は精神障害者保健福祉手帳(以下「精神手帳」)の対象です。知的障害を伴わない発達障害単独の場合、療育手帳ではなく精神手帳の取得を検討します。
判定基準
- 1級: 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度
- 2級: 日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加えることを必要とする程度
- 3級: 日常生活に著しい制限を受けないが、社会生活に制限あり
- 医師の診断書(精神保健指定医・主治医)で初診から6ヶ月経過必要
主なメリット
- 所得税・住民税の障害者控除
- 自治体によって自動車税・公共料金等の減免
- NHK受信料の減免
- 就労時の「障害者雇用枠」の利用(本人成人後)
- 精神通院医療(自立支援医療)との併用申請
精神手帳は2年ごとに更新申請が必要です。療育手帳のように発達期に取得すると永続するタイプとは異なり、診断書を都度提出する形式。子どもの場合、成人移行期の連続性に注意が必要です。
身体障害者手帳 — 身体機能の証明
身体機能(視覚・聴覚・肢体不自由・心臓・腎臓・呼吸器・膀胱直腸・小腸・免疫・肝臓等の内部障害)に永続的な障害がある場合、身体障害者手帳の対象です。重症心身障害児・脳性麻痺等で取得するケースが多いです。
等級は1〜6級(重い順)で、複数の障害が重複する場合は等級が上がります。発達障害単独では対象になりませんが、運動発達遅滞・てんかんに伴う身体障害がある場合は同時取得もあり得ます。
発達障害児の手帳選択フローチャート
| お子さまの状態 | 取得を検討する手帳 |
|---|---|
| 知的障害のみ(IQ75以下) | 療育手帳 |
| ASD・ADHD単独で知的遅れなし | 精神障害者保健福祉手帳 |
| 知的障害+ASD/ADHD合併 | 療育手帳(+必要に応じて精神手帳) |
| 重症心身障害(身体+知的) | 身体障害者手帳+療育手帳 |
| 境界知能(IQ70-85)で生活困難 | 精神手帳(自治体判断による) |
複数手帳の同時保有 — メリットとデメリット
療育手帳+精神手帳のように、複数の手帳を同時に持つことは法的に可能です。それぞれ対象が違う制度なので、メリットも違います。
メリット
- 療育手帳: JR等運賃割引が手厚い、永続的(知的障害は変動しにくい)
- 精神手帳: 自立支援医療と連動申請しやすい、精神通院医療費を1割負担に
- 行政手続きで「知的障害+精神障害」両方を証明できる
- 将来の障害基礎年金請求で診断根拠を増やせる
デメリット
- 更新・再判定の手間が増える(精神手帳2年、療育手帳2〜10年)
- 同一の控除・割引は二重に受けられない(片方のみ適用)
- 医師の診断書代が二重にかかる(精神手帳: 5,000〜10,000円程度)
手帳を取る・取らないの判断軸
手帳取得は保護者の任意です。「取れるなら取る」のが基本ですが、躊躇する保護者もいます。判断材料を整理します。
| 取った方が良いケース | 取らなくて良いケース(慎重判断) |
|---|---|
| 通院・通所・送迎で公共交通機関を頻繁利用 | ほとんど通院・公共交通機関を使わない |
| 将来の就労支援(障害者雇用)を視野に入れる | 進学・就職で「健常者ルート」を希望 |
| 特別児童扶養手当・障害児福祉手当を申請 | 既に他の手当で十分対応している |
| きょうだい児がいて経済負担が大きい | 世帯所得が高く各種減免のメリット薄い |
| 親が高齢化、子の将来の福祉サービス利用想定 | 一時的な発達課題で改善見込み強い |
誤解: 「手帳を取ると進学・就職で不利になる」というのは事実ではありません。手帳の有無は本人・保護者が任意で開示・非開示を選べ、学校・就職先には共有されません。情報は本人の同意なく漏れない仕組みです。
取得後にできなくなることはない
手帳を取ったから「健常者ルートに戻れない」「障害者と決定する」というのは誤解です。発達経過に応じて手帳の等級を下げる更新申請ができ、療育手帳は再判定で「該当しない」となれば返納も可能です。精神手帳は2年で自動失効するため、更新しなければ自然に手帳を持たない状態に戻ります。
申請の流れ(共通)
- 1. 自治体の障害福祉課で申請書類を受け取る
- 2. 指定の判定機関で発達検査・診断書を取得(療育手帳は児童相談所、精神手帳は医師)
- 3. 申請書・診断書・写真を自治体に提出
- 4. 判定結果が郵送で届く(1〜3ヶ月)
- 5. 手帳交付・受け取り(自治体窓口または郵送)
💡 受給者証(通所支援)と手帳は別制度。受給者証は手帳がなくても取得可能で、児発・放デイの利用に手帳は必須ではありません。混同せずに分けて手続きを進めましょう。
よくある質問
Q. 療育手帳と精神手帳の両方を持っていると、控除も2倍受けられる?
いいえ、所得控除は「本人1人につき1控除」が原則です。等級が高い方の手帳で控除を受けます。ただしJR運賃割引(療育手帳)とNHK受信料減免(精神手帳)のように、別制度のメリットはそれぞれ利用できます。
Q. 子どもが小さくて精神手帳の診断書が出ないと言われました
精神手帳は初診から6ヶ月以上経過した時点での診断書が必要です。発達障害の確定診断は4-6歳頃に出るケースが多いため、それまでは療育手帳(知的を伴う場合)もしくは「将来取得」の前提で受給者証のみで対応します。
Q. 療育手帳の等級が変わると、もらえる手当も変わりますか?
はい、変わります。特別児童扶養手当・障害児福祉手当は等級と連動しており、重度になれば月3〜5万円増額するケースもあります。再判定で等級が変わったら、必ず自治体に手当の見直し申請をしましょう。
Q. 手帳を取らずに児発に通い続けることはできる?
できます。児発・放デイの利用要件は「通所受給者証」のみで、手帳は不要です。手帳取得のメリットは「税控除・運賃割引・各種手当」中心なので、必要性を感じた時に申請すれば問題ありません。
療育手帳の判定基準と取得方法を詳しく知りたい方はこちら
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