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児発・放デイ 収益シミュレーション — 損益分岐点と稼働率設計 [2026年版]

児童発達支援・放課後等デイサービスの損益分岐点を定員規模別(10名・15名・20名)に試算。稼働率ごとの月次収支シミュレーション、固定費・変動費の分類、開業1〜2年目の収益見通しを実務目線で解説。放デイ収益シミュレーションの出発点として。

公開: 2026-07-02読了 約11

児童発達支援(児発)・放課後等デイサービス(放デイ)の開業を検討するとき、「いくら売れば黒字になるのか」「稼働率が何%なら採算が取れるのか」という損益分岐点の把握は最優先事項です。本記事では報酬単価×稼働率という収益構造の基本から、定員10名・15名・20名の損益分岐点試算、稼働率別の月次収支シミュレーション、開業1〜2年目の見通しまでを順に解説します。

児童発達支援・放課後等デイサービスの収益構造 — 報酬単価×稼働率

一般的な小売・飲食業と異なり、児発・放デイの売上は「報酬単価 × 1日あたり利用者数 × 開所日数」の積で決まります。利用者1人あたりの単価はほぼ制度単価で固定される一方、「何名がどれだけ通所するか」という稼働率が経営の唯一の変数です。稼働率を上げることが、そのまま月次収益の改善に直結します。

収益の構成要素内容事業者がコントロールできるか
基本報酬単価制度告示で定まる(地域区分・定員・サービス区分)×(制度固定)
加算単価配置・体制・実績で上乗せ○(配置・研修で変動)
1日あたり利用者数通所予約の充填率○(集客・ケア質で変動)
月間開所日数運営規程上の開所日設定△(祝日・長期休暇で変動)
地域単価係数所在地の地域区分で決まる×(立地固定)

稼働率 = 実利用延べ人数 ÷ (定員 × 開所日数)。定員10名・月20開所日なら、延べ利用200コマが「稼働率100%」。実務上は75〜85%が安定経営のひとつの目安とされています。

報酬単価の計算方法 — 基本報酬と主要加算

令和6年4月改定後の報酬体系では、児童発達支援・放課後等デイサービスの基本報酬は「サービス区分(児発/放デイ)」「定員規模」「地域区分」の組み合わせで決まります。さらに配置・支援実績に応じた加算が上乗せされます。

基本報酬の目安(1日1人あたり)

サービス種別定員規模基本報酬(参考レンジ)1単位の金額目安
児童発達支援定員10名以下約600〜900単位/日地域区分により10.00〜11.40円/単位
児童発達支援定員11〜20名約500〜800単位/日同上
放課後等デイサービス定員10名以下約500〜700単位/日同上
放課後等デイサービス定員11〜20名約430〜630単位/日同上

地域区分は所在する市区町村によって1〜7級地に分類されており、1単位あたりの金額が10.00円(その他地域)〜11.40円(1級地・特別区等)の幅があります。東京都特別区などの1級地では同じ単位数でも14%ほど高い報酬を受け取れます。詳細はお住まいの自治体・国保連にご確認ください。

加算による単価上乗せ — 20〜50%増が現実的なレンジ

  • 児童指導員等加配加算: 常勤の指導員配置で算定、基本報酬の10〜20%相当
  • 処遇改善加算(新加算I〜IV): 職員の賃金改善・キャリアパス整備で算定、最大区分で基本報酬の30%超
  • 専門的支援加算: OT・PT・ST・公認心理師等の常勤配置で算定
  • 欠席時対応加算: 前日〜当日キャンセル時に算定(月4回上限)
  • 家庭連携加算: 保護者との家庭連携の記録がある場合に算定
  • 送迎加算: 片道54単位、往復で月次収益に大きく影響

加算の合計額が基本報酬の30〜50%になる事業所は珍しくありません。開業前に「どの加算を取りに行くか」の配置設計をしておくことが、放デイ収益シミュレーションの精度を高める第一歩です。

固定費と変動費の分類 — 人件費率の目安

児発・放デイの費用構造は、人件費が売上の60〜70%を占める「人件費集約型」です。固定費の大半が人件費であり、稼働率が低い時期でも人件費負担はほぼ変わりません。この特性が損益分岐点の高さに直結しています。

費目分類定員10名の月額目安備考
人件費(管理者+児発管+常勤指導員)固定80〜110万円社会保険料込み
人件費(非常勤指導員)半固定15〜30万円稼働日数に一部比例
家賃固定15〜25万円物件立地で大きく変動
水道光熱費半変動5〜8万円利用人数に若干比例
通信費・システム利用料固定2〜5万円
車両維持費(送迎車1台)半固定5〜10万円走行距離で変動
消耗品・教材費変動3〜8万円利用者数に比例
保険料固定2〜5万円
広告・営業活動費固定3〜10万円開業後2年は高め
月間合計130〜211万円

人件費率が70%を超えると、売上が少し落ちるだけで即赤字に転じます。開業当初は人員配置基準ぎりぎりでスタートし、契約児童数の増加に合わせて段階的に人員を厚くするのが一般的です。

損益分岐点の試算 — 定員10名・15名・20名の計算例

児発・放デイの損益分岐点は「月間総費用 ÷ (1日1人あたり報酬単価 × 開所日数)」で必要利用者数として求められます。以下は「標準的な地域区分・基本報酬+主要加算込みで1日1人あたり約9,000円」を前提とした参考試算です。地域単価・加算取得状況により変動しますので、ご自身の事業計画に合わせてご確認ください。

定員規模月間固定費目安損益分岐点(必要延べ利用人数)必要稼働率の目安損益分岐点 売上目安
定員10名約140〜170万円約156〜189コマ/月(20日営業)約78〜95%約140〜170万円
定員15名約155〜190万円約172〜211コマ/月(20日営業)約57〜70%約155〜190万円
定員20名約170〜220万円約189〜244コマ/月(20日営業)約47〜61%約170〜220万円

この試算から見えることは、「定員が大きいほど損益分岐点の稼働率が下がる」という点です。定員10名では稼働率80%以上を維持しないと赤字になりやすい一方、定員20名なら60%前後の稼働率でも黒字化できる可能性があります。ただし定員拡大には面積・人員両面でコストが増加するため、一概にどちらが有利とは言えません。

上記は参考試算です。実際の損益分岐点は加算取得状況・地域単価・人員配置・物件費用により大きく変わります。事業計画策定の際は自治体の指定権者や税理士・社労士と連携した実数値での試算を推奨します。

稼働率別 月次収支シミュレーション(児童発達支援・定員10名モデル)

放課後等デイサービス・児童発達支援ともに、開業直後は稼働率が低い時期が続くのが一般的です。以下は定員10名・月20日開所・1日1人あたり報酬約9,000円(加算込み)・固定費155万円/月での稼働率別収支の参考値です。

稼働率1日平均利用者数月間売上目安月間収支目安状況
30%3名約54万円約▲101万円開業初月の想定
50%5名約90万円約▲65万円開業2〜3ヶ月目
65%6.5名約117万円約▲38万円開業4〜6ヶ月目
80%8名約144万円約▲11万円黒字化の手前
85%8.5名約153万円約±0万円損益分岐点付近
90%9名約162万円約+7万円安定黒字圏
95%9.5名約171万円約+16万円理想的な稼働水準

このシミュレーションでは稼働率85%が損益分岐点付近に相当します。開業から85%に到達するまでの期間が、資金繰りの山場となります。「何ヶ月で何%まで上げるか」という稼働計画が、放デイ収益シミュレーションの核心です。

開業1年目・2年目の収益見通し

児発・放デイの稼働率は、開設後の計画相談員(相談支援専門員)との連携や口コミによる契約児童の積み上がりに左右されます。一般的な軌跡として以下のようなパターンが多く見られます。

開業1年目の典型的な推移

  • 1〜2ヶ月目: 稼働率20〜40%(初期契約児童3〜5名。国保連請求は2ヶ月遅れで入金)
  • 3〜4ヶ月目: 稼働率40〜60%(計画相談員経由の紹介が増え始める)
  • 5〜6ヶ月目: 稼働率60〜75%(口コミ・相談会での認知が広がる)
  • 7〜9ヶ月目: 稼働率75〜85%(定員に対して契約児童数が定員の120〜150%になると安定してくる)
  • 10〜12ヶ月目: 稼働率80〜90%(1年通して開所できた実績で信頼感が増す)
  • 累計赤字額(1年間): 規模・固定費によるが250〜500万円程度が多いレンジ

開業2年目以降の収益見通し

  • 稼働率90%前後が定着すると、月次黒字が30〜80万円規模になる事業所が多い
  • 2年目は処遇改善加算の実績報告を踏まえた加算区分の見直しが可能
  • 2店舗目への展開判断は「1店舗目の月次黒字が安定してから」が基本(最低6ヶ月連続黒字)
  • 初期投資(600〜1,000万円レンジ)の回収期間は、順調でも開業から18〜36ヶ月が目安

国保連への請求は翌月10日締め・翌々月支払いが基本のため、売上を立てても入金は約2ヶ月後になります。開業当初の運転資金は最低3〜4ヶ月分を手元に確保しておくことが推奨されます。

黒字化を早める加算活用と集客戦略

加算設計: 開業直後から取れる加算を漏らさない

  • 処遇改善加算(新加算I): 開業前からキャリアパス・就業規則を整備して最高区分を狙う。区分差で年間100〜200万円変わることがある
  • 児童指導員等加配加算: 児発管以外に常勤の指導員を1名以上配置すれば算定可能な場合が多い
  • 欠席時対応加算: 前日キャンセルや当日キャンセル時に電話・記録で対応すれば月4回まで算定可
  • 送迎加算: 送迎実施なら片道54単位、往復で月次収益の積み上げに直結
  • 個別サポート加算I: 通所受給者証に「個別サポート加算」の旨が記載された児童が対象、事前確認が必要

集客戦略: 稼働率を早期に引き上げる3つの経路

  • 【経路1】計画相談員(相談支援専門員)との連携: 児発・放デイへの紹介の主要ルート。開所前から相談支援事業所への挨拶まわりを行い、空き状況の定期報告を習慣化する
  • 【経路2】保育所等訪問: 保育所・幼稚園・小学校への訪問支援の実績が、施設からの紹介につながる
  • 【経路3】地域の子育て支援機関との連携: 市区町村の発達相談窓口・保健センター・特別支援学校との関係構築で口コミが生まれる

収益性の高い事業所の共通特徴

放デイ収益シミュレーションで高い黒字率を実現している事業所には、以下の共通点が観察されます。

  • 定員に対する契約児童数が130〜150%: 欠席・振替を見越した「定員オーバー契約」で実稼働率を安定させている
  • 処遇改善加算が最上位区分: 職員への賃金還元と加算収入の両立が実現できている
  • 送迎エリアが広い(片道15〜20km圏内): 商圏の広さが契約児童の絶対数を増やす
  • 児発管の在籍が安定: 児発管欠如減算(基本報酬の30%減)に陥ると損益分岐点が大幅に上昇するため、離職対策に注力している
  • 月次の収支管理が徹底されている: 加算の算定漏れ・記録不備による返還リスクを管理することで、安定した入金が続く

まとめ

児発・放デイの損益分岐点は固定費水準と報酬単価の組み合わせで決まり、定員10名モデルでは稼働率85%前後が目安となるケースが多く見られます。開業1年目は資金繰りの山場が続くため、「開業前の運転資金確保・計画相談員開拓・加算設計の3点セット」を事前に固めておくことが重要です。放課後等デイサービス・児童発達支援の売上試算は定員規模・地域単価・加算取得状況で大きく変わるため、ご自身の事業計画に合わせた試算を行うことをお勧めします。

収益シミュレーションは開業計画の生命線です。ROOTSの開業プレビューでは、定員・地域・加算の組み合わせをもとにした月次収支の概算を確認できます。

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参考・引用

  • こども家庭庁「令和6年度 障害児通所支援の基本報酬単価表」(令和6年4月施行)
  • 「障害児通所給付費等の算定に関する体系等について(報酬告示)」(令和6年3月告示)
  • 指定通所支援に係る人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)
  • 厚生労働省「地域区分別単位数単価表(令和6年度)」
  • 福祉医療機構(WAM)「福祉・医療事業の事業計画書・収支計画書の作成の手引き」

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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