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保育所等訪問支援の併設運営 — インクルージョン推進加算と地域中核機能を取りに行く設計

保育所・幼稚園・学校等を訪問して障害児支援を行う「保育所等訪問支援」を児発・放デイに併設して指定取得する実務設計。令和6年度報酬改定後の単価・インクルージョン推進加算・訪問支援員配置・採算・中核機能強化加算との接続を実務的に整理。

公開: 2026-06-03読了 約11

「保育所等訪問支援」は児童福祉法第6条の2の2第6項に規定される障害児通所支援の一類型で、訪問支援員が保育所・幼稚園・学校・乳児院・児童養護施設等を訪問し、障害児本人への直接支援と訪問先スタッフへの間接支援(コンサルテーション)を行うサービスです。令和6年度報酬改定で単価が大幅に引き上げられ、児発・放デイ事業所が「インクルージョン推進加算」「中核機能強化加算(令和8年度新設検討)」を取りに行くための戦略的併設サービスとして位置づけが強化されました。本記事は児発・放デイ既存事業者向けに、保育所等訪問支援の併設指定取得と運営設計を実務的に整理します。

なぜ今、保育所等訪問支援を併設するのか — 3つの戦略的理由

  • ①インクルージョン推進加算が令和6年度改定で新設され、保育所等訪問支援の実施が要件化された
  • ②児童発達支援センター中核機能の4機能のうち「地域のインクルージョン推進」を担う唯一のサービスで、令和8年度の中核機能強化加算(検討中)の必須要件になる見込み
  • ③通所型児発を卒業して通常園・通常学級に進んだ児童との接点を継続でき、保護者ロイヤリティ・口コミ集客に直結する

サービスの全体像 — 「直接支援」と「間接支援」の二層構造

保育所等訪問支援の特徴は、対象児童への直接支援だけでなく、訪問先(保育所・学校等)のスタッフへの間接支援(コンサルテーション)を同時に行う二層構造にあります。具体的な支援内容は以下です。

支援区分対象具体的内容
直接支援対象児童集団活動への参加促進、感覚調整、コミュニケーション支援
間接支援訪問先スタッフ対象児の特性説明、環境調整助言、合理的配慮の提案
記録共有訪問先・保護者・事業所訪問記録の3者共有、個別支援計画への反映

指定要件 — 児発・放デイ事業所が併設取得する場合

保育所等訪問支援は、既存の児発・放デイ事業所が同一法人で併設指定を取得するケースが大半です。新規単独指定よりもハードルが低く、人員兼務も可能なため実務的な選択肢として現実的です。

項目要件
管理者1名以上(児発・放デイ管理者と兼務可)
児童発達支援管理責任者1名以上(児発・放デイの児発管と兼務可)
訪問支援員保育士・児童指導員・PT/OT/ST・心理職等のうち訪問支援に相応しい知識・技術を持つ者
設備事業所(児発・放デイと共用可)
対象訪問先保育所・幼稚園・認定こども園・小学校・中学校・特別支援学校・乳児院・児童養護施設等

保育所等訪問支援員には2023年度以降「訪問支援員養成研修」の受講が望ましいとされており、令和8年度報酬改定で受講要件化される可能性があります。新規開業前に研修受講ルートを確保しておくことを推奨します。

令和6年度改定後の単価構造 — 1回1時間以上で約1,300単位

区分単価(単位)備考
保育所等訪問支援費約1,303単位/回1回1時間以上の訪問
初回加算200単位/回初回訪問時
多職種連携支援加算150単位/回PT/OT/ST/心理職が訪問支援員として実施
事業所内相談支援加算80単位/回保護者面接
利用者負担上限額管理加算150単位/月管理対象事業所として

訪問1回あたりの収入は単価ベースで約14,500-16,500円(地域区分により変動)。これに加算を積むと1回あたり16,000-18,000円程度になります。通所型児発(1日1人約10,000-12,000円)より単価が高いのが特徴です。

インクルージョン推進加算との接続 — 児発・放デイ本体への波及効果

インクルージョン推進加算は令和6年度改定で新設された加算で、児発・放デイの利用児童を保育所・幼稚園・学校等の地域社会に統合していくことを評価します。算定要件として「保育所等訪問支援事業を併設」「年間の訪問実績数」が含まれており、保育所等訪問支援を運営していない事業所はこの加算を取れません。

加算名算定要件影響範囲
インクルージョン推進加算保育所等訪問支援の併設+年間訪問実績児発・放デイ本体に月数万円規模で加算
中核機能強化加算(令和8年度検討)保育所等訪問支援の実施が必須要件の見込み児童発達支援センター転換時の加算
関係機関連携加算訪問先との情報共有実績個別ケースでの加算

インクルージョン推進加算は「保育所等訪問支援の指定を取得している」だけでは算定不可で、年間の訪問実施実績(訪問児童数・訪問回数)が要件化されています。指定取得後、実際に稼働させて実績を作ることが算定の前提です。

訪問エリアと訪問先開拓 — 既存利用児童ベースで設計

保育所等訪問支援の訪問先開拓は、既存の児発・放デイ利用児童の在籍保育所・学校を起点に設計するのが最も現実的です。利用児童の保護者から保育所等訪問支援の希望が出るルートと、児発管・管理者が保育所・学校に直接アプローチして関係構築するルートの両方を並行します。

  • ①既存児発卒業児が進んだ保育所・幼稚園・小学校への訪問支援提案
  • ②既存放デイ利用児童の在籍小学校・特別支援学校への訪問支援提案
  • ③地域の発達障害児童相談支援員からの紹介ルート
  • ④管轄自治体の障害児支援担当課経由での保育所コンサル相談

採算試算 — 訪問支援員1名・月40件で月商どこまで

訪問支援員1名(常勤)が1日2件×営業20日=月40件の訪問を実施する想定で試算します。1回あたり収入を約15,500円(基本+多職種連携加算)とすると、月間収入は約62万円、年間収入は約750万円。これに加えて児発・放デイ本体のインクルージョン推進加算として月数万円(年間40-60万円)の上乗せが期待できるため、合算で年間800-820万円の収入規模になります。

人件費は訪問支援員1名で年500-600万円。児発管・管理者は本体事業所と兼務のため按分10-20%として年80-150万円。テナント・車両は本体共用なので増分は車両のみ年30-50万円。合計人件費+固定費は年700-800万円となり、保育所等訪問支援単体の営業利益は0-100万円のレンジに収まる薄利構造です。

保育所等訪問支援は単独収益では薄利ですが、(1)児発・放デイ本体のインクルージョン推進加算・関係機関連携加算が増収(2)児童発達支援センター中核機能要件の確保(3)保育所・学校への顔出しによる新規児童の紹介ルート確保、という3つの波及効果を含めれば実質的な収益貢献は大きくなります。

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記録様式 — 「3者共有」が前提

保育所等訪問支援の記録は、事業所内部記録に加えて(1)訪問先(保育所・学校)への報告書(2)保護者への報告書、の3者共有が標準運用です。記録フォーマットは「訪問日時・訪問先・対象児童・直接支援内容・間接支援内容(コンサル内容)・訪問先スタッフからの相談事項・次回訪問予定」を最低限含み、訪問先・保護者双方に署名または受領記録を残します。

訪問先との関係構築 — 「お邪魔します」姿勢の重要性

保育所等訪問支援の最大の運用ハードルは「訪問先との関係構築」です。保育所・学校側は外部の支援員が入ってくることに対して(1)業務妨害になる不安(2)自分たちが評価される不安(3)情報共有の責任範囲が不明という3点で警戒します。訪問支援員は「教える」ではなく「一緒に考える」姿勢で入り、訪問先スタッフを支援対象として扱うコンサルテーション能力が問われます。訪問支援員研修ではこの姿勢の習得に時間が割かれます。

リスクシナリオ — 失敗する併設運営パターン

  • 指定取得だけして実績ゼロ → インクルージョン推進加算が取れず、加算化を見送るしかない
  • 訪問支援員のスキル不足 → 訪問先との関係が崩れて出入り禁止になる
  • 本体事業所の児発管が兼務しきれず訪問記録が個別支援計画に反映されない
  • 訪問先が遠隔地に拡大しすぎて訪問時間より移動時間が長くなる
  • 訪問先との連携が形骸化して間接支援の中身がコピペ化する

中核機能強化加算への布石としての戦略的価値

令和8年度改定で議論されている児童発達支援センターの「中核機能強化加算」は、保育所等訪問支援の実施が要件の一つに含まれる見込みです。中核機能強化加算は経営インパクト年100-300万円規模が想定されており、これを取りに行く事業所はセンター転換と保育所等訪問支援の両方を準備する必要があります。今すぐ取れる加算は少なくても、令和8年度改定への布石として早期に保育所等訪問支援を立ち上げ、訪問実績を積んでおくことが戦略的に有効です。

まとめ — 「単独で稼ぐ」より「波及効果で取りに行く」

保育所等訪問支援は単独事業として見ると薄利ですが、(1)インクルージョン推進加算(2)中核機能強化加算(令和8年度新設見込み)(3)地域の保育所・学校との関係資産、という3つの波及効果を含めれば児発・放デイ事業者にとって戦略的価値が高い併設サービスです。指定取得自体は人員兼務で可能なため、既存事業所にとって投資負担は限定的です。「今のうちに指定を取って訪問実績を作る」ことが、令和8年度改定以降の競争ポジションを決める分岐点になります。

参考・引用

  • こども家庭庁「障害福祉サービス等報酬告示」(令和6年4月)
  • 児童福祉法第6条の2の2第6項(保育所等訪問支援)
  • こども家庭庁「保育所等訪問支援ガイドライン」(令和6年改定版)
  • 厚生労働省「障害児通所支援に関する基本指針」
  • 令和5年度こども家庭庁科学研究「保育所等訪問支援の実態と効果」
  • 全国保育所等訪問支援連絡協議会「訪問支援員研修テキスト」

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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