制度・学術
児発・放デイの個別支援計画書き方完全ガイド — 5領域別記入例30パターン [2026年版]
児発・放デイで必須の個別支援計画の書き方手順、5領域(健康・生活/運動・感覚/認知・行動/言語・コミュニケーション/人間関係・社会性)それぞれの記入例30パターン、保護者同意・モニタリングまでを実務目線で完全解説。
児発・放デイの個別支援計画は、児童発達支援管理責任者(児発管)が作成義務を負う法定書類です。令和6年度報酬改定で「5領域(健康・生活/運動・感覚/認知・行動/言語・コミュニケーション/人間関係・社会性)を全て含むこと」が明確化され、未対応の場合は個別支援計画未作成減算(月所定単位30%減算が2か月継続、3か月目以降50%減算)の対象となります。本記事では個別支援計画の書き方手順を7ステップで整理し、5領域それぞれの記入例を合計30パターン掲載します。
個別支援計画とは — 法的位置づけと5領域の必須化
個別支援計画は児童福祉法に基づく指定通所支援の運営基準第27条(放デイは第71条の2)で作成が義務付けられた書類で、児発管が作成、保護者の同意を得て交付し、少なくとも6か月に1回モニタリングを行う必要があります。令和6年4月の報酬改定により、こども家庭庁ガイドラインに示される5領域を踏まえた総合的な支援内容を盛り込むことが基本報酬の算定要件となりました。
| 5領域 | 主な支援内容例 |
|---|---|
| 健康・生活 | 健康状態の把握、食事・排泄・睡眠・清潔・身辺自立 |
| 運動・感覚 | 姿勢保持、粗大運動、微細運動、感覚統合、感覚過敏への配慮 |
| 認知・行動 | 注意・記憶・概念形成、行動コントロール、見通し、般化 |
| 言語・コミュニケーション | 受容言語、表出言語、代替コミュニケーション(AAC)、会話 |
| 人間関係・社会性 | 愛着形成、集団参加、ルール理解、対人スキル、自己理解 |
5領域のいずれかが欠落していると、令和6年度以降の運営指導で「個別支援計画の不備」として指摘される事例が増えています。総合的に把握した上で、本人・家族のニーズに合わせて重点領域を設定する構成が望ましいです。
個別支援計画 作成の7ステップ手順
- 【Step1】インテーク — 受給者証・診断書・前事業所からの引継ぎ情報を整理
- 【Step2】アセスメント — 5領域を観察・面談・既存検査結果(WISC・新版K式等)から多面的に把握
- 【Step3】保護者ヒアリング — 家庭でのニーズ・困りごと・将来像を聴取
- 【Step4】支援目標の設定 — 長期目標(6か月〜1年)と短期目標(3〜6か月)を5領域から導出
- 【Step5】個別支援会議 — 児発管・指導員・看護師等で原案を協議し、文言を確定
- 【Step6】原案の説明と同意 — 保護者に対して内容を口頭で説明し、署名・押印を得て交付
- 【Step7】モニタリング — 少なくとも6か月に1回(放デイ可能なら3か月推奨)、達成度を評価し計画を更新
個別支援会議の議事録、保護者交付の控え、モニタリング記録の3点セットを保管していないと、運営指導で「実施プロセスの確認ができない」と判断され減算対象になることがあります。
【健康・生活】領域の記入例6パターン
パターン1: 偏食・食事介助が必要な未就学児
- 長期目標: 当事業所で出される主食・主菜・副菜のうち、1品は完食できる
- 短期目標: 苦手食材を1口チャレンジできる頻度を週1回 → 週3回に増やす
- 支援内容: 食事前にメニュー写真を提示し見通しを持たせる、隣席の児童をモデルにする、完食シールで強化
- 評価指標: 完食できた品数の週次集計
パターン2: 排泄自立を進めたい3歳児
- 長期目標: 日中の排尿をトイレで行える
- 短期目標: 排尿サインを職員に伝える(言葉・絵カードどちらでも可)
- 支援内容: 時間排尿(60〜90分間隔の声かけ)、成功時の称賛、絵カード提示
- 評価指標: 1日のトイレ成功回数 / 失敗回数
パターン3: 睡眠リズムが乱れている小学生
- 長期目標: 平日21時までに就寝できる日が週4日以上
- 短期目標: 帰宅後のスケジュールを家庭と共有し可視化する
- 支援内容: 連絡帳に活動量を記入、家庭向けに就寝前のクールダウン提案、午睡を控える
- 評価指標: 保護者記入の睡眠記録
パターン4: 服薬管理が必要な児童
- 長期目標: 主治医の処方を保護者・事業所で漏れなく管理できる
- 短期目標: 服薬時間に拒否なく服用できる
- 支援内容: 服薬チェック表の運用、看護師による服薬時のバイタル確認、保護者との情報共有
- 評価指標: 服薬実施率(月次)
パターン5: 身辺自立(着替え)を強化したい児童
- 長期目標: 上着・ズボン・靴下を一人で着脱できる
- 短期目標: 手順カードを見ながら上着の前後を間違えず着られる
- 支援内容: タスクアナリシス(分解した手順カード)、できた所をスモールステップで称賛
- 評価指標: 着替え工程の自立度チェックリスト
パターン6: アレルギー・医療的配慮が必要な児童
- 長期目標: アレルゲン誤食ゼロを継続する
- 短期目標: 自分のおやつ・主治医の指示を職員に確認するセルフ確認の習慣化
- 支援内容: アレルギー食材表のラミネート常備、提供前のダブルチェック、本人への声かけ
- 評価指標: ヒヤリハット件数 / 月
【運動・感覚】領域の記入例6パターン
パターン7: 姿勢保持が苦手な児童
- 長期目標: 椅子に座って15分間活動に集中できる
- 短期目標: バランスクッションを活用しながら10分間着席できる
- 支援内容: 体幹トレーニング(動物歩き等)、座位保持グッズの活用、活動間に運動を挟む
- 評価指標: 着席継続時間の記録
パターン8: 微細運動(手指巧緻性)を伸ばしたい児童
- 長期目標: 鉛筆で簡単な図形(○△□)を模写できる
- 短期目標: 親指・人差し指・中指の3指で物をつまめる
- 支援内容: 粘土・洗濯バサミ・ビーズ通し・指先遊び、書字前に指の準備運動
- 評価指標: 模写課題の達成度評価
パターン9: 粗大運動(体幹・バランス)を強化したい児童
- 長期目標: 片足立ち10秒、ケンケン5回を安定して行える
- 短期目標: 平均台を介助なしで歩ける
- 支援内容: サーキット運動の導入、トランポリン、感覚遊び
- 評価指標: 月1回の運動テスト
パターン10: 感覚過敏(聴覚)への対応が必要な児童
- 長期目標: 集団活動の中で苦手な音への対処方法を自分で選択できる
- 短期目標: 苦手な音が出たときにイヤーマフを自分で取りに行く
- 支援内容: 音環境の整備、クールダウンスペース、イヤーマフの常備
- 評価指標: パニック・離席頻度の推移
パターン11: 感覚鈍麻で危険認知が弱い児童
- 長期目標: 「痛い」「熱い」を職員に言語または身振りで伝えられる
- 短期目標: 危険な物(刃物・熱湯)に近づく前に「とまれ」のサインで止まれる
- 支援内容: ソーシャルストーリー、視覚的サインカードによる注意喚起
- 評価指標: ヒヤリハット記録の振り返り
パターン12: 利き手が定まらない児童
- 長期目標: 利き手を決め、安定した筆記姿勢で書字できる
- 短期目標: 食事・書字で同じ手を使う頻度を80%以上にする
- 支援内容: 作業療法士助言を反映、姿勢矯正補助具、保護者との確認
- 評価指標: 利き手使用率の観察記録
【認知・行動】領域の記入例6パターン
パターン13: 切り替えが苦手な児童
- 長期目標: 活動の切り替え時に大きなパニックを起こさず移行できる
- 短期目標: タイマー提示で活動終了を受け入れられる回数を増やす
- 支援内容: スケジュールボード、5分前予告、終わりカードの提示
- 評価指標: 移行時の不適応行動の頻度
パターン14: 注意の持続が短い児童
- 長期目標: 集中課題に10分間取り組める
- 短期目標: 5分課題を最後まで離席せず取り組める
- 支援内容: 課題量の可視化、達成シール、刺激の少ない学習スペース
- 評価指標: 課題達成率と離席回数
パターン15: こだわり行動が強い児童
- 長期目標: こだわりを生活の中で建設的に活かせる
- 短期目標: 強いこだわりが出た際に代替活動を選択できる
- 支援内容: 興味関心を学習教材に転用、選択肢を視覚化、ABA的アプローチ
- 評価指標: こだわり行動による活動中断の頻度
パターン16: 数概念を育てたい児童
- 長期目標: 1〜10の数を具体物と一致させて数えられる
- 短期目標: 5までの数を具体物で正しく数えられる
- 支援内容: 具体物操作 → 半具体物 → 数字へのスモールステップ、日常場面での数え
- 評価指標: 月次の課題達成チェック
パターン17: 衝動性のコントロールを育てたい児童
- 長期目標: 順番待ちができる
- 短期目標: 「ちょっと待って」の声かけに5秒間応じられる
- 支援内容: 視覚的タイマー、順番カード、できた瞬間に即時称賛
- 評価指標: 衝動行動による介入の頻度
パターン18: 不安・パニックが強い児童
- 長期目標: 不安時に自分でクールダウン方法を選べる
- 短期目標: 「困った」を表すヘルプカードを使える
- 支援内容: クールダウンスペースの整備、深呼吸法・5-4-3-2-1グラウンディング
- 評価指標: パニック時の自己対処の有無
【言語・コミュニケーション】領域の記入例6パターン
パターン19: 発語が少ない児童
- 長期目標: 二語文で要求を伝えられる
- 短期目標: 「ちょうだい」「やって」の有意味発語が日常で出る
- 支援内容: モデリング、要求場面の意図的設定、絵カードと発語のセット提示
- 評価指標: 1日あたりの有意味発語数
パターン20: 代替コミュニケーション(AAC)導入
- 長期目標: PECSフェーズ3まで進み、欲しいものを自発的に伝えられる
- 短期目標: 絵カードを手渡して要求を伝える行動を1日5回以上行う
- 支援内容: PECS手順に沿った段階的指導、家庭との連携
- 評価指標: PECSの進度記録、自発的要求の頻度
パターン21: 受容言語(指示理解)を伸ばしたい児童
- 長期目標: 2段階の指示に従って行動できる
- 短期目標: 1段階の指示に5回中4回従える
- 支援内容: 指示+ジェスチャー+絵カードの併用、徐々にプロンプトを減らす
- 評価指標: 指示従動率の記録
パターン22: 会話のキャッチボールを育てたい児童
- 長期目標: 同年代の児童と3往復の会話ができる
- 短期目標: 大人との会話で「うん」「ううん」だけでなく内容を返せる
- 支援内容: 会話練習プログラム、トピックカードの活用、職員モデリング
- 評価指標: 会話セッションの音声記録振り返り
パターン23: 構音障害(発音不明瞭)の児童
- 長期目標: 苦手な音(サ行・ラ行等)が単語レベルで明瞭に出せる
- 短期目標: 鏡を見ながら口形模倣ができる
- 支援内容: 言語聴覚士(ST)助言の反映、口腔機能体操、舌・口唇トレーニング
- 評価指標: 月1回の構音チェック
パターン24: 文章での表現を育てたい就学児
- 長期目標: 日記を3文以上書ける
- 短期目標: 「いつ・どこで・何をした」を1文で書ける
- 支援内容: 5W1Hワークシート、書きたいことを口頭→書字に移すスキャフォールディング
- 評価指標: 連絡帳・日記の文字数推移
【人間関係・社会性】領域の記入例6パターン
パターン25: 集団参加が難しい児童
- 長期目標: 集団活動に最後まで参加できる
- 短期目標: 集団の輪の中に5分間留まれる
- 支援内容: 興味のある活動から段階的に集団に組み入れる、安心できる職員の付添
- 評価指標: 集団活動への参加時間
パターン26: ルール理解を進めたい児童
- 長期目標: ボードゲーム・順番制の遊びで勝ち負けを受け入れられる
- 短期目標: ゲームの基本ルールを言葉で説明できる
- 支援内容: ルールカードの可視化、勝ち負けの感情ワークシート
- 評価指標: ゲーム場面での適応行動の記録
パターン27: 友達との関わりを広げたい児童
- 長期目標: 同年代の友達を3名以上認識し、名前で呼べる
- 短期目標: 友達に「いれて」「かわって」と言える
- 支援内容: ペア活動の意図的設定、ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 評価指標: 友達への発信回数の観察記録
パターン28: 自己理解・自己肯定感を育てたい児童
- 長期目標: 自分の好き・苦手を言葉で説明できる
- 短期目標: 「自分にできること」を3つ挙げられる
- 支援内容: できたこと日記、自己紹介ワーク、ストレングス活動
- 評価指標: 自己紹介内容の質的変化
パターン29: トラブル時の対処法を育てたい児童
- 長期目標: 嫌なことがあった時に手を出さず言葉で伝えられる
- 短期目標: 怒りスケールで自分の感情を「大・中・小」で表現できる
- 支援内容: アンガーマネジメント教材、感情カード、ロールプレイ
- 評価指標: トラブル時の言語化発生率
パターン30: 愛着形成・安心基地が必要な未就学児
- 長期目標: 特定の職員を安心基地として活用しつつ、活動範囲を広げられる
- 短期目標: 担当職員と1対1で10分間遊びを共有できる
- 支援内容: 担当制の徹底、入退室時の儀式化(ルーティン)、肯定的注目
- 評価指標: 入室時の不安行動の有無
保護者同意とモニタリングの実務
個別支援計画は児発管が原案を作成し、個別支援会議で多職種協議を経たうえで、保護者に説明・同意・交付の3ステップを踏みます。同意を得る際は内容を口頭で必ず説明し、署名と日付を残します(電子署名でも可)。
- モニタリング頻度: 児童発達支援・放課後等デイサービスとも最低6か月に1回(放デイは3か月推奨)
- モニタリング項目: 5領域別の達成度、保護者満足度、家庭状況の変化、次期目標の方向性
- 記録様式: 達成度を「○達成 / △一部達成 / ×未達成」で評価し、根拠となる行動観察を併記
- 保管: 個別支援計画の控え・モニタリング記録・個別支援会議議事録は5年間保管
モニタリングを6か月に1回実施していない場合、運営指導で「個別支援計画未作成減算」相当の指摘がなされる事例があります。実施日を必ず記録に残し、変更がなくても「変更なし」と明記して保管してください。
よくある書き方ミスと改善ポイント
| ありがちなNG例 | 改善ポイント |
|---|---|
| 「集団行動ができるようになる」と抽象的 | 「集団活動に最後まで参加できる」+評価指標(参加時間)を併記 |
| 5領域のうち2-3領域しか書かれていない | 5領域すべてに支援内容を入れ、重点領域だけを目標化する形にする |
| 「楽しく過ごす」など測定不能な目標 | 「○○の活動に週2回参加」など測れる行動に置き換える |
| 保護者ニーズが反映されていない | ヒアリング項目を様式化し、保護者の言葉を逐語で引用する |
| モニタリング記録が「変化なし」だけ | 5領域ごとに達成度を評価し、根拠行動を1行ずつ記録する |
| 前年度のコピペで日付だけ変更 | 本人の発達段階を再アセスメントし、目標難度を引き上げる/見直す |
個別支援計画は児発管の専門性が最も問われる書類です。5領域を網羅し、本人と家族のニーズを言語化し、達成度を測定可能な形にする — この3つを意識すれば、運営指導でも保護者面談でも揺るがない計画になります。施設内で書き方の型(テンプレ)を整え、新人指導員にも共有することで、計画の質が組織として安定します。