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居宅訪問型児童発達支援の開業 — 重度障害児宅訪問支援の指定要件と単価構造
通所が困難な重度の障害児に対し自宅で発達支援を行う「居宅訪問型児童発達支援」の指定要件、人員配置、令和6年度報酬改定後の単価、対象児童の判定、訪問エリア設計、開業初期投資・採算ラインを実務的に整理。
「居宅訪問型児童発達支援」は児童福祉法第6条の2の2第4項に規定される障害児通所支援の一類型で、重度の障害により外出が著しく困難な児童に対し、職員が自宅を訪問して発達支援を提供するサービスです。2018年制度創設以来、医療的ケア児支援法の施行と相まって需要は拡大していますが、全国の指定事業所数は2026年時点でも500事業所程度と限定的で、地域によっては存在しないエリアもあります。本記事では新規開業を検討する事業者向けに、令和6年度報酬改定後の現行制度・採算構造・運用設計を実務目線で整理します。
サービスの位置づけ — 通所が困難な児童に「届ける」
居宅訪問型児童発達支援(以下「居宅訪問型児発」)は、児発・放デイのような通所サービスではなく、職員が児童の居宅(自宅)を訪問して発達支援を行うアウトリーチ型のサービスです。サービス区分上は児童発達支援の一類型に位置づけられますが、対象児童・人員配置・単価・運営方針すべてが通所型児発とは別物として設計されています。
対象児童の判定基準 — 「重度」と「外出困難」の二重要件
居宅訪問型児発を利用できる児童は、児童福祉法施行規則上「重度の障害の状態その他これに準ずるものとして厚生労働大臣が定めるもの」と規定され、具体的には以下の要件を満たす児童が対象です。
- 重症心身障害児(大島分類1-4相当)
- 重度の知的障害かつ重度の肢体不自由(重複障害)
- 医療的ケアを要し外出が困難な児童(人工呼吸器管理・気管切開・経管栄養等)
- 感染症等の理由で集団生活が著しく困難と医師が認めた児童
対象児童の判定は市町村が受給者証の支給決定時に行います。判定の根拠書類として医師の意見書が必要で、「通所が困難」であることの医学的根拠が明示されている必要があります。
人員配置基準 — 訪問支援員の資格要件
| 職種 | 要件 | 備考 |
|---|---|---|
| 管理者 | 常勤1名以上(他職種兼務可) | 社会福祉施設長等の研修修了が望ましい |
| 児童発達支援管理責任者 | 常勤1名以上 | 基礎研修・実践研修修了 |
| 訪問支援員 | 保育士・児童指導員・看護師・PT/OT/ST/心理職のいずれか | 訪問先で直接支援を実施 |
訪問支援員は児童発達支援事業の従業者として実務経験等が求められます。一般の保育士・児童指導員が即座に訪問支援員になれるわけではなく、児童発達支援の実務経験や、看護師・療法士等の医療系資格保持が事実上の標準です。医療的ケア児を主たる対象とする場合、看護師の配置は実質必須です。
令和6年度改定後の基本報酬単価
| 区分 | 単価(単位) | 備考 |
|---|---|---|
| 居宅訪問型児童発達支援費 | 1,035単位/回 | 1回あたり1時間以上の訪問 |
| 初回加算 | 200単位/回 | 初回訪問時 |
| 事業所内相談支援加算 | 80単位/回 | 保護者面接 |
| 家庭連携加算 | 対象外(訪問が本体のため) | 通所型児発の家庭連携加算とは別建て |
居宅訪問型児発は「1回1時間以上の訪問」が算定単位です。週2回までの利用が標準で、月8回程度が上限となるケースが多い運用です。通所型児発と異なり毎日利用にはなりません。
加算戦略 — 訪問型ならではの算定対象
- 保育・教育等移行支援加算: 通所型児発への移行を支援(年4回まで・500単位)
- 事業所内相談支援加算: 保護者面接の評価
- 初回加算: アセスメント期の加算
- 医療連携体制加算: 訪問看護等との連携(該当時)
- 専門的支援加算: PT/OT/ST/心理職を雇用している場合に加算化可能(自治体運用要確認)
- 処遇改善加算等: 全障害福祉サービス共通
訪問エリア設計 — 半径30分が現実解
居宅訪問型児発の経営効率を決定する最大の変数は「訪問エリア」です。1日に訪問できる件数は移動時間に直結し、1人の支援員あたり1日4-5件が現実的な上限です(訪問1時間+移動30分×往復+記録時間20分=2時間/件)。事業所所在地から半径30分以内に訪問対象児童が集中していることが採算条件で、地方の広域エリアでは1日2-3件しか回れず、採算割れリスクが高まります。
初期投資 — 通所型より軽量
| 費目 | 金額目安 |
|---|---|
| 事業所兼事務所(賃料は通所型より小規模可・20-30㎡) | 月8-15万円 |
| 訪問用車両(軽自動車1-2台) | 1台80-150万円(中古可) |
| 訪問用備品(評価キット・支援教材) | 50-100万円 |
| 指定申請関連費用 | 20-50万円 |
| 運転資金(6ヶ月分人件費) | 600-900万円 |
| 初期投資合計 | 約800-1,400万円 |
通所型児発と比較すると、テナント規模が小さくて済むこと、送迎車両が大型不要なこと、室内設備投資が軽いことから、初期投資は半額〜2/3程度に圧縮できます。一方で運転資金は同等以上必要(集客に時間がかかるため)です。
採算試算 — 支援員2名・対象児15名で年商どこまで
支援員2名(常勤)・対象児童15名・1児童あたり週2回×月8回利用・基本単価1,035単位+処遇改善加算等を仮定すると、月間収入は約185万円、年間収入は約2,200-2,400万円が概算値です。人件費は児発管+訪問支援員2名+管理者で約1,400-1,600万円、固定費(テナント・車両・通信)で約350-450万円。営業利益は150-450万円のレンジで、通所型児発(年商5,000万円規模)と比較すると小規模ですが、固定費の軽さで損益分岐は速く到達できます。
訪問1件あたり収入は単価ベースで約11,500-13,000円(地域区分により変動)。これに対し人件費・移動コストを差し引くと1件あたり粗利は4,000-6,000円程度です。1日4件の安定稼働を確保できるかが採算の急所です。
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集客導線 — 通所型とは別ルート
居宅訪問型児発の利用児童は「通所が困難な児童」のため、通所型児発と集客チャネルが完全に別です。具体的には(1)NICU退院児フォロー外来(2)小児科専門医療機関(3)訪問看護ステーション(4)医療的ケア児支援センター(5)重心型放デイ(通所が難しくなった児童の代替先として)、の5チャネルが主流です。地域の小児医療ネットワーク内での認知獲得が立ち上げの最重要施策となります。
通所型との併設運営という選択肢
居宅訪問型児発を単独運営するのは採算上厳しいため、(1)重心型放デイとの併設(2)医療型児童発達支援との併設(3)訪問看護ステーションとの法人内併設、いずれかのフォーマットを取る事業所が大半です。併設運営にすることで(a)人件費の共用(b)対象児童の自然な相互送客(c)児発管・看護師の兼務、というシナジーが効きます。単独開業を狙う場合は地域に該当ニーズが多いエリア(都市部医療機関集積地)を選定する必要があります。
リスクシナリオ
- 対象児童の重症化・入院長期化による訪問キャンセル(欠席時減算ルールあり)
- 訪問支援員の離職による穴埋め困難(代替が即時に立てられない)
- 訪問先での医療事故リスク(在宅医療機器のトラブル等)
- 訪問エリア拡大による移動時間増・採算悪化
- 通所型児発への卒業時の移行支援の難しさ(対象児が通所できる状態にならない場合が多い)
まとめ — 「地域に1つあれば成立する」隙間事業
居宅訪問型児童発達支援は、通所が困難な重度障害児・医療的ケア児を地域で支える隙間サービスです。事業規模は通所型より小さく利益率も限定的ですが、地域内競合がほとんどなく、医療的ケア児支援法の施行で需要側の構造的拡大が続いています。通所型児発・重心型放デイ・訪問看護ステーション等との併設運営を前提に、地域の小児医療ネットワークと一体になって設計することが成立条件です。