制度・学術

東京都の実地指導 対策・頻度・指摘事例まとめ [2026年版]

東京都の児童発達支援・放課後等デイサービスが受ける実地指導(運営指導)を完全解説。申請・指導の実務窓口(東京都・特別区・八王子市・町田市)別の実施体制、頻度、よく指摘される書類不備・人員配置の落とし穴、是正計画書の作り方まで2026年最新情報でまとめました。

公開: 2026-07-02読了 約12

東京都の実地指導(2022年度より「運営指導」に名称統一)は、児童発達支援・放課後等デイサービス事業者にとって避けられない法定確認プロセスです。東京都内では、児童福祉法第21条の5の15に基づく法令上の指定権者は東京都(および中核市として独自の指定権限を持つ八王子市)です。ただし東京都は「事務処理特例条例」に基づき多くの特別区や一部の市(町田市等)へ申請・指導の事務を移譲しているため、実際の申請・指導の窓口は「東京都・各特別区・八王子市・町田市」の4系統に大別されます。どの行政区に事業所があるかで対応窓口と実施体制が異なるため、物件所在地が確定したら所在区市(不明な場合は東京都福祉局)へ必ず確認することをお勧めします。本記事では東京都固有の体制と頻出指摘事例、対策を管理者・児発管目線で詳しく解説します。

東京都の実地指導とは — 目的と法的根拠

実地指導は、児童福祉法第21条の5の24に基づき、指定権者が事業所を訪問して指定基準の遵守状況を実地で確認する制度です。厚生労働省は2021年度に「実地指導」を「運営指導」に名称変更しましたが、東京都の行政文書では「指導検査」という表現が引き続き使われることもあります。いずれも法的根拠・確認内容は同一です。

目的は大きく2つです。第一は「事業者支援」— 基準を正しく理解し適切な支援を提供できるよう、指定権者が助言・指導を行います。第二は「利用者保護」— 指定基準を下回る運営が行われている場合、改善を求め、重大な場合は指定取消しの措置を講じます。東京都は毎年度「障害福祉サービス事業者指導検査実施要綱」を定め、指導対象事業所を選定しています。

実地指導(運営指導)と「監査」は別物です。実地指導は定期的な確認・支援。監査は不正請求等の疑いがある場合に実施する強制調査で、指定取消・返還命令の対象になります。

実地指導の頻度と実施タイミング

全国の児発・放デイを対象とした実地指導の頻度は「概ね3〜6年に1回」が目安とされています。東京都内では、開設後3年以内に初回の指導検査を受けることが多く、その後は3〜5年間隔で繰り返されます。ただし、以下の条件に該当する場合は早期に選定されることがあります。

  • 国保連への請求データに異常値(急激な加算増・欠席率の高さ等)が認められた場合
  • 保護者・職員等からの苦情・通報が行政窓口に入った場合
  • 虐待通報や重大事故の報告があった場合
  • 自己評価・保護者評価の公表が確認できない場合
  • 法定の変更届が未提出のまま実態と一致していない場合

事前通知は原則1〜2ヶ月前に郵送されます。通知には事前提出書類の一覧が同封されており、指定日時・提出期限が明記されています。抜き打ち(無通告)で行われるケースは少数ですが、制度上は可能です。

申請・指導窓口別 実施体制の違い — 東京都・特別区・八王子市・町田市

東京都内の障害児通所支援では、法令上の指定権者は東京都(および中核市の八王子市)ですが、東京都は事務処理特例条例に基づき各区市へ申請・指導の事務を移譲しているため、実際の窓口は所在区市によって変わります。これが東京都固有の複雑さで、同じ「東京都」内でも対応窓口・実施スタイルが異なります。移譲の範囲や内容は区市により異なり変わることもあるため、所在地確定後に必ず窓口へ確認してください。

申請・指導窓口対象エリア担当部署(参考)主な特徴
東京都(福祉局)多摩地区30市4町(八王子・町田を除く)・島しょ東京都福祉局障害者施策推進部 指導監査課大規模な一括実施・年1〜2回集中実施期間あり
各特別区(23区)各区内の事業所各区の福祉部/子ども家庭部等 障害福祉課区によって書式・頻度にばらつきあり。区独自様式を使用する場合も
八王子市八王子市内八王子市 子ども家庭部 障害福祉課政令指定都市準拠の独自体制。市独自のチェックリストあり
町田市町田市内町田市 福祉部 障害福祉課東京都からの事務移譲により申請・指導の窓口となる(法令上の指定権者は東京都。町田市は中核市ではないため独自の指定権限はなく、移譲の範囲・窓口は要確認)

複数区・市に事業所がある場合は、それぞれの指定権者から別々に指導が入ります。本部でまとめて対応することはできないため、各事業所ごとに書類体制を整えてください。

特別区の対応で注意すること

東京都は事務処理特例条例に基づき各区へ申請・指導の事務を移譲しているため、法令上の指定権者は東京都ですが実際の窓口は各区の担当課となります。移譲の範囲や内容は区により異なるため、書式・頻度・重視ポイントも区ごとに違います。例えば、一部の区では「支援記録の形式」について独自基準を設けており、国の指針に加えて区様式の活用を強く推奨するケースがあります。実地指導の事前通知が届いた際は、通知元の窓口に「事前提出書類の書式指定はあるか」を必ず確認することをお勧めします。

児童発達支援・放課後等デイサービス 実地指導でよく指摘される共通項目

東京都内の指定権者に共通して、児童発達支援・放課後等デイサービスで頻出する指摘事項があります。以下は東京都の指導検査実施要綱に示された確認項目と、現場でよく指摘される内容を整理したものです。

指摘カテゴリ主な指摘内容根拠条文(厚労省令第15号)
個別支援計画モニタリング期限超過(6ヶ月ルール)/保護者署名漏れ第9条・第22条
人員配置児発管の専従要件不充足/配置人数の常勤換算ミス第5条・第6条
加算根拠書類送迎加算の運行日誌不備/加配加算の勤怠記録不足各加算の告示
虐待防止体制委員会の年2回開催未実施/研修記録の不備第26条の3
BCP・訓練業務継続計画の未策定/避難訓練の実施回数不足第30条の2
自己評価年1回の実施未確認/HPでの公表なし第26条の2

書類面の指摘事例 — 個別支援計画・記録・運営規程

個別支援計画の不備

東京都の実地指導で最も多い指摘のひとつが「個別支援計画(以下、支援計画)」の不備です。児発・放デイでは児発管がすべての利用児童の支援計画を作成し、6ヶ月以内にモニタリングを実施しなければなりません(厚生労働省令第15号第22条)。特に指摘されやすいのは以下の4点です。

  • モニタリング実施日が6ヶ月を1日でも超過している(ファイルに日付が記載されていても、実際の実施記録がない)
  • 保護者への計画交付時の同意署名が未取得、または押印のみで署名なし
  • アセスメントシートの内容と計画の目標に整合性がない(例: 「コミュニケーション力向上」という目標の根拠がアセスメントに見当たらない)
  • 前回モニタリング結果が次回計画に反映されていない

運営規程・重要事項説明書の不整合

運営規程は変更の都度、指定権者への変更届提出が義務付けられています。変更届を出さずに実態が変わっていると、運営規程と実態の不一致として指摘を受けます。特に東京都内では、2024年度の報酬改定に伴い「対象年齢・定員・加算種別」の変更を加えた事業所が増加したため、変更届の提出漏れに注意が必要です。

支援記録(日々の記録)の不備

  • 支援提供日の記録がない、または「通常支援実施」などの記載で内容が不明
  • 欠席時の対応記録(電話確認等)がない
  • 医療的ケア児の看護師対応記録が別保管で実地指導当日に提示できない
  • 送迎運行日誌に到着時刻・引渡し者の記録漏れ

人員配置・設備面の指摘事例

児発管・管理者の配置要件

放課後等デイサービス・児童発達支援では、児発管は「常勤かつ専従」が原則です(多機能型の場合の兼務要件は別途確認が必要)。東京都の実地指導で指摘されやすいのは、常勤専従要件の解釈ミスです。例えば「管理者と児発管を同一人物が兼務」は要件を満たしますが、「児発管が別の事業所の管理者を兼務」は原則として認められていません。勤務実態を確認できるタイムカードや出勤簿が実地指導当日に提示できるよう整備しておく必要があります。

指導訓練室の面積基準

児童発達支援・放課後等デイサービスの指導訓練室は「児童1人につき2.47㎡以上」が必要です。実地指導では定員と実際の訓練室面積を突き合わせます。開設後に設備を変更した場合(パーテーション設置・倉庫への用途変更等)は、面積が変わることがあるため、毎年度確認しておくことをお勧めします。また、東京都内では建物の改修や転貸による設備変更のケースが多く、変更届提出漏れが発生しやすいため注意が必要です。

東京都条例対応の送迎安全確認

東京都は「東京都子供を虐待から守る条例」等に基づき、車両による送迎時の安全管理に関して独自の確認を行います。特に、車内への置き去り防止措置(乗降確認チェックリストの整備・降車後の車内確認)については、実地指導でも確認対象となっています。車内確認シートの様式は東京都が参考様式を公開しているため、所轄の指定権者(各区・市)の担当窓口で確認することをお勧めします。

実地指導前の準備 — チェックリスト活用法

実地指導の通知が届いてからの準備だけでは限界があります。東京都内の事業所は「日常運営の中で書類を完備し続ける体制」を整えることが最も有効な対策です。以下のポイントを年間スケジュールに組み込むことをお勧めします。

実施時期確認・整備内容
毎月個別支援計画のモニタリング期限一覧を確認し、期限超過がないかチェック
毎月算定中加算の根拠書類(勤怠・日誌・実施記録)を月次でファイリング
4月・10月虐待防止委員会・身体拘束適正化委員会の開催と議事録作成
4月・10月法定研修(虐待防止・感染症・BCP)の年間スケジュールを確認・実施
年1回(3月まで)事業所自己評価・保護者評価の実施とHP公表
随時職員・設備の変更があれば即時変更届提出
通知受領後事前提出書類の収集と「提出版」と「当日確認版」の2部体制で準備

東京都特有の準備ポイント

  • 指定権者が特別区の場合は区独自様式の有無を窓口に事前確認する
  • 医療的ケア児を受け入れている場合は看護師の資格証・医師指示書・個別ケアプランを一式まとめておく
  • 車両送迎を実施している場合は、東京都の送迎安全確認様式(乗降チェックシート等)の整備状況を確認する
  • 副支援計画がある場合(他機関との連携計画等)は、担当者・保護者同意書を含めてファイリング
  • 国保連へのオンライン請求データと事業所台帳の整合性を確認する(利用実績の差異は先に特定しておく)

指摘を受けた場合の対応手順と是正計画書の作り方

実地指導で指摘を受けた場合、通常は後日「指導内容通知書」が郵送されます。通知書を受領してから原則30日以内に「改善(是正)計画書」を提出する必要があります。是正計画書の内容が不十分だと再指導や追加調査につながるため、以下の構成で具体的に記載することが重要です。

  • 【指摘事項の番号と内容】指導内容通知書の番号をそのまま引用する
  • 【原因分析】なぜ指摘を受けることになったか(体制不備・認識誤り・属人化等)
  • 【改善策】具体的にどう変えるか(書式変更・担当者設置・システム化等)
  • 【実施期日】「〇〇年〇月〇日までに完了」と日付を明記する
  • 【再発防止策】チェック体制・責任者設置・定期確認頻度など
  • 【エビデンス添付】可能な範囲で改善後の書類サンプルや議事録を添付

是正計画書提出後のフォローアップ

是正計画書を提出して終わりではありません。指定権者から「改善確認」の連絡が来ることがあり、改善が確認できない場合は再指導の対象となります。提出した計画書の内容を職員全員で共有し、「いつ誰が何をしたか」を記録に残しておくことで、後日の確認にも対応しやすくなります。

複数指摘が重なった場合でも、誠実な改善対応を継続することで信頼関係を保てます。指摘内容について不明な点は、指導担当者に確認の連絡を入れることをお勧めします。指定権者は基本的に「支援する立場」で対応しています。

実地指導を「日常運営の一部」にする考え方

東京都の実地指導に限らず、障害児通所支援における法令対応は「特別な準備イベント」ではなく「日常業務の質管理の結果」として現れます。個別支援計画のモニタリング期限管理・法定研修の年間計画・加算根拠書類の月次整備・自己評価の公表——これらを運営の仕組みとして組み込んでいる事業所は、実地指導の通知を受けても慌てることなく対応できます。

東京都固有の複雑さ(申請・指導窓口が東京都・特別区・八王子市・町田市の4系統に分かれること・区市ごとの差異・東京都条例対応)は確かに負荷になりますが、どの窓口も基本的には「指定基準の遵守」と「子どもへの適切な支援」を確認しているという点で共通です。書類の整備体制を一度確立すれば、毎回の実地指導を「現在の運営を適正に伝える場」として活用できるようになります。

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参考・引用

  • 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)
  • 厚生労働省「指定障害福祉サービス等及び指定障害児通所支援等の指導指針について」(令和3年3月31日障障発0331第3号)
  • こども家庭庁「障害児通所支援ガイドライン」(令和6年7月)
  • 東京都福祉局「障害福祉サービス事業者指導検査実施要綱」
  • 児童福祉法第21条の5の24(指定障害児通所支援事業者に対する報告等)

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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