制度・学術

加算の取りこぼし自己監査シート 児発・放デイ|請求前点検

「実施しているのに算定していない」加算を月次の請求前に洗い出す自己監査の手順を、記録ベース加算・体制加算・処遇改善の区分ごとに整理しました。会議や面談の記録と算定入力の突合、体制届出コードと配置の照合など、取りこぼしを防ぐ点検項目を児発・放デイ向けにまとめています。

公開: 2026-05-30読了 約9

加算の取りこぼしとは、支援として実際に行っているのに請求(算定)に反映していない状態を指します。児発・放デイの現場では、会議や面談を開いて記録も残しているのに、月次の請求入力で加算フラグを立て忘れる、体制届出はしたのに算定コードを選び忘れる、といったズレが起きがちです。この記事では、そうした取りこぼしを月次の請求前に自分たちで洗い出すための自己監査の手順を、記録ベース加算・体制系加算・処遇改善の区分ごとに整理します。

自己監査で確認するのは、大きく分けて「記録はあるのに算定入力がない加算」「配置や体制は満たしているのに届出・登録が追いついていない加算」の2種類です。何を(What)・なぜ(Why)取りこぼしが起きるのか、そしていつ(When)・どう突合するのかを、月次の請求締め前のフローとしてまとめています。金額のインパクトは事業所の規模や利用状況によって変動するため、ここでは断定的な損失額ではなく「点検の観点」として扱います。

前提として、加算の単位数・算定回数の上限・算定要件は、こども家庭庁の報酬告示(平成24年厚生労働省告示第122号および令和6年度改定)と各加算の留意事項通知で定められています。本記事は一般的な点検の考え方を整理したもので、個別の算定可否や様式の当てはめは事業所の状況によって異なります。実際の算定は必ず自治体(指定権者)への確認と最新の告示・通知に基づいて判断してください。

加算の取りこぼしが起きる3つの構造

取りこぼしは「うっかり」だけで起きるのではなく、記録・請求・届出という3つの流れが別々に動いていることから構造的に発生します。まずどこで漏れやすいのかを把握しておくと、自己監査シートの点検項目を組み立てやすくなります。

取りこぼしの型起きる場面主な原因
①記録あり・算定なし会議・面談・欠席連絡は記録済みだが請求入力で加算を選んでいない記録担当と請求担当が別、加算フラグの入力箇所が別画面
②体制は満たすが未届出専門職を配置しているのに体制加算の届出コードが未登録配置変更と体制届の提出タイミングがずれる
③資格・要件の登録漏れ有資格者を採用したが加算算定の前提となる登録・研修修了の反映が遅れる入職手続きと算定システムの反映が非同期

取りこぼしの多くは「実施と算定の担当・タイミングが分かれている」ことから生まれます。自己監査は、記録・算定入力・届出という3つの流れを月次で1回突き合わせる作業だと捉えると設計しやすくなります。

記録ベース加算の自己監査(関係機関連携・家族支援・欠席時対応)

記録ベース加算とは、会議・面談・連絡調整などの「行為の記録」が算定根拠になる加算です。①記録あり・算定なしの取りこぼしが最も起きやすい領域なので、自己監査シートの中心に据えます。月次で「その月に残した記録の件数」と「請求入力で算定した回数」を突き合わせるのが基本の点検です。

関係機関連携加算の点検ポイント

関係機関連携加算は、保育所・学校等と会議を開いて連携した場合に算定します。令和6年度改定でⅠ(計画作成等の会議)とⅡ(情報共有の会議)に整理され、それぞれ月1回が上限で、同一月にⅠとⅡを併算定することはできません。会議の要旨記録と保護者同意があるかが要件です。

  • 就学先・進学先や医療機関との会議記録があるのに、請求入力で加算を立てていないケースがないか
  • ⅠとⅡを同月に両方入力していないか(相互排他のため一方に寄せる)
  • 会議の要旨記録・保護者同意の記録が残っているか(記録がないと算定根拠にならない)
  • 電話や立ち話だけの「連絡」を会議として算定していないか(過大算定の防止)

家族支援加算の点検ポイント

家族支援加算は、令和6年度改定で旧「家庭連携加算」と「事業所内相談支援加算」を統合・再編したものです。居宅訪問等の個別支援(Ⅰ系)とグループでの支援(Ⅱ系)に分かれ、それぞれ月4回まで(合計で月最大8回まで)算定できる設計です。面談や相談の記録は残っているのに、月4回の枠を使い切らずに終わっている取りこぼしが起きやすい加算です。

  • 保護者面談・居宅訪問の記録があるのに算定入力していない回がないか
  • オンラインでの相談支援を対面と区別して正しい区分で入力しているか
  • 同じ児童が複数サービスを併用している月に、児童単位・サービス横断で上限(各月4回)を超えていないか
  • 個別支援(Ⅰ系)を同一日に2回以上算定していないか(1日1回・月4回が上限)
  • 事前に保護者同意を得て個別支援計画に位置づけているか(要件を満たさない回を算定していないか)

欠席時対応加算の点検ポイント

欠席時対応加算は、利用予定日の前々日・前日・当日に欠席連絡を受け、連絡調整や相談援助を行って記録した場合に、月4回を上限に算定できます(児発・放デイとも94単位/回)。欠席連絡の記録は残っているのに算定に反映されていない、というのは典型的な①型の取りこぼしです。

  • 欠席連絡の記録と、欠席時対応加算の算定回数が月次で一致しているか
  • 相談援助の内容まで記録しているか(単なる欠席受付では要件を満たさない)
  • 月4回の上限を意識しつつ、上限内で算定漏れがないか

記録ベース加算は「記録があること」が算定の前提です。逆に、記録が薄いまま件数だけ算定すると実地指導で返還を求められることがあります。取りこぼしを埋める際は、必ず記録の実体を確認してから算定に反映してください。

体制系加算の照合(専門的支援・強度行動障害・福祉専門職員配置)

体制系加算は、専門職の配置や研修修了といった「体制」が算定の前提になる加算です。②体制は満たすが未届出、③資格・要件の登録漏れの取りこぼしがここで起きます。配置の実態と、体制届の届出内容・算定システムに登録したコードが一致しているかを照合します。

専門的支援体制加算・専門的支援実施加算

令和6年度改定で、専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理担当職員等)に関する評価が「専門的支援体制加算(配置の体制)」と「専門的支援実施加算(個別の実施)」に分離されました。体制加算は配置・届出が前提、実施加算は児童ごとの専門的支援実施計画と実施記録が前提で、実施加算には利用日数に連動した月の算定回数上限があります。

  • 専門職を配置しているのに専門的支援体制加算の届出・登録が済んでいるか
  • 実施加算について、実施計画と実施記録があるのに算定入力が漏れている回がないか
  • 実施加算の月の算定回数上限(利用日数に連動)を超えて入力していないか
  • 専門的支援実施計画に保護者の署名(同意)があるか(署名を欠くと算定根拠にならない)
  • 配置の変更(専門職の入退職)を体制届と算定コードの両方に反映したか

強度行動障害児支援加算

強度行動障害児支援加算は、強度行動障害支援者養成研修(実践研修)の修了者を配置し、対象児(行動関連項目の合計点が一定以上)へ支援計画に基づく支援を行った場合に算定します。研修修了者を採用・配置したのに、その事実が算定の前提として登録・反映されていないと、③型の取りこぼしになります。

  • 研修修了者の配置が、加算算定の前提として体制・システムに反映されているか
  • 対象児の要件(行動関連項目の合計点)を確認したうえで支援計画に基づいて支援しているか
  • 研修修了者が退職した場合に、算定を継続してよいか要件を再確認したか

福祉専門職員配置等加算

福祉専門職員配置等加算は、常勤の児童指導員等のうち社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士・保育士等の有資格者の割合や、常勤職員・勤続年数の要件に応じて区分が分かれる体制加算です。有資格者を採用して割合が変わったのに、上位区分への見直しや届出が追いついていないと取りこぼしになります。

  • 有資格者の割合・常勤割合・勤続年数を再計算し、現在の区分が実態と合っているか
  • 採用・資格取得で区分が上がる可能性がある場合、届出の見直しを検討したか
  • 逆に退職で要件を下回った場合、算定を続けていないか(過大算定の防止)

体制系加算は「実態→届出→算定コード」の順で反映されます。人の入退職や資格取得があった月は、この3点がずれていないかを重点的に照合すると取りこぼしと過大算定の両方を防げます。

処遇改善の上位区分の見直し(令和8年6月改定の検討観点)

処遇改善加算は、令和6年度改定で旧「福祉・介護職員処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」を新・処遇改善加算Ⅰ〜Ⅳに一本化したもので、基本報酬と各種加算の合計単位数に区分ごとの率を乗じて算定します。さらに令和8年こども家庭庁告示第5号(令和8年6月1日施行)で、加算Ⅰ・Ⅱに上位区分「ロ」が新設され、各区分の率が引き上げられました。

ここでの取りこぼしは、他の加算とはやや性質が異なり「本来取れる上位区分より低い区分のままになっている」という形で現れます。上位区分は生産性向上・協働化等の要件を満たす事業所が対象となるため、要件を満たせているかを自己監査の観点として棚卸しします。率の適用は提供月に応じて決まり(令和8年5月分以前は旧率・6月分以降は新率)、月遅れ請求で取り違えないよう注意が必要ですが、区分そのものの見直しは事業所側の届出判断が必要です。

  • 現在の処遇改善加算の区分が、自事業所の体制・要件と照らして最上位になっているか
  • 令和8年6月以降、上位区分「ロ」の要件(生産性向上・協働化等)を満たせる見込みがあるか
  • 賃金改善の実績や職場環境等要件の記録が、区分維持・引き上げの根拠として整っているか
  • 5月分以前の再請求と6月分以降で率が異なる点を、月遅れ請求の際に取り違えていないか

処遇改善加算の区分見直しは計画書・実績報告と連動します。上位区分を狙う場合は、要件と提出期限を指定権者の案内で確認したうえで判断してください。率だけを見て安易に上位区分を選ぶと、要件未達で返還対象になることがあります。

月次請求前の突合フロー(記録↔算定入力↔届出の3点点検)

最後に、ここまでの点検を月次の請求締め前に回すための突合フローをまとめます。ポイントは、記録・算定入力・届出の3点を「同じ月・同じ児童・同じ加算」の単位で突き合わせることです。特別なツールがなくても、月次で1回このフローを回すだけで取りこぼしの多くは可視化できます。

  • STEP1 記録の棚卸し: その月に残した会議・面談・欠席連絡・専門的支援の実施記録を加算ごとに数える
  • STEP2 算定入力との突合: 記録件数と請求システムの算定回数を突き合わせ、記録はあるのに算定していない回を洗い出す
  • STEP3 上限・排他の確認: 各加算の月の算定回数上限や相互排他(関係機関連携ⅠⅡ等)を超えていないか確認する
  • STEP4 体制・届出の照合: 専門職配置・研修修了・有資格者割合の実態と、体制届・算定コードが一致しているか照合する
  • STEP5 処遇改善区分の確認: 現在の区分が要件に照らして妥当か、上位区分の見直し余地がないかを棚卸しする
  • STEP6 差分の処理判断: 取りこぼしは月遅れ算定や次回請求での是正を、過大算定は過誤調整を、それぞれ要件と期限を確認して判断する
点検区分突き合わせるもの主な取りこぼしの型
記録ベース加算記録件数 ↔ 算定回数①記録あり・算定なし
体制系加算配置の実態 ↔ 体制届 ↔ 算定コード②未届出 / ③登録漏れ
処遇改善区分の要件 ↔ 現在の届出区分上位区分の取り逃し

この突合を毎月同じ手順で回せるように、加算ごとの記録件数と算定回数が並んで見える形に整えておくと、請求前の点検が短時間で終わります。記録がそのまま算定の根拠として残る運用にしておくことが、取りこぼしを減らす土台になります。

まとめ:取りこぼしは「3つの流れの突合」で防ぐ

加算の取りこぼしは、記録・算定入力・届出という3つの流れが別々に動くことから構造的に生まれます。記録ベース加算は「記録件数と算定回数の突合」、体制系加算は「配置の実態と届出・算定コードの照合」、処遇改善は「区分要件の棚卸し」というように、区分ごとに突き合わせる対象を決めておくと、月次の請求前に短時間で自己監査できます。取りこぼしを埋めるときも、過大算定を防ぐときも、根拠になるのは記録の実体です。

本記事は令和6年度報酬改定および令和8年こども家庭庁告示第5号を踏まえた一般的な点検の考え方を整理したものです。単位数・算定回数の上限・算定要件は告示・留意事項通知で定められ、地域や事業所の状況によって当てはめが異なります。各加算の算定可否・様式の最終確認は、必ず最新の告示・通知と指定権者(自治体)への確認に基づいて行ってください。

参考・引用

  • こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」(障害児支援)
  • 児童福祉法に基づく指定通所支援等に要する費用の額の算定基準(平成24年厚生労働省告示第122号)
  • 令和6年度報酬改定等(障害児支援)に関するQ&A VOL.1(令和6年3月29日)
  • 令和8年こども家庭庁告示第5号(令和8年6月1日施行・処遇改善加算)

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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