制度・学術

事業所内相談支援加算ⅠⅡ 徹底解説 — 児発・放デイの保護者面談を加算化する実務(令和6年度改定後)

令和6年度改定で再構成された「事業所内相談支援加算Ⅰ・Ⅱ」の違い、対象となる相談形態、算定上限、面談時間の根拠記録、児発管/保育士の役割分担、家族支援加算との関係を実務目線で完全解説。保護者面談を取りこぼさず加算化する運用フローを示す。

公開: 2026-06-01読了 約10

事業所内相談支援加算は、児童発達支援・放課後等デイサービスにおける「保護者との個別相談」を報酬上で評価する加算です。令和6年度改定で家族支援に関する加算群が再編され、本加算はⅠ(個別)とⅡ(グループ)の2区分構造になりました。保護者支援は現場で実質的に毎月行われているにもかかわらず、加算化されていない事業所が非常に多いため、本稿で運用設計を整理します。

本記事は令和6年度報酬改定後(令和6年4月以降)の現行制度に基づきます。地域単価(地域区分)による換算は管轄自治体の運用に従ってください。

事業所内相談支援加算とは

事業所内相談支援加算は、事業所の職員(児発管または保育士・児童指導員等)が、利用児童の保護者に対して個別またはグループの相談支援を行った場合に算定できる加算です。「単なる送り迎え時の世間話」ではなく、「事前予約のうえで個別の支援テーマを設定した相談」が算定対象となります。

Ⅰ(個別相談)とⅡ(グループ相談)の単位数比較

区分相談形態単位数算定上限主な対応者
事業所内相談支援加算Ⅰ個別相談(1対1または1家族対1事業所)100単位/回利用児童1人につき月1回まで児発管または相談支援に習熟した職員
事業所内相談支援加算Ⅱグループ相談(複数家族の集団相談・ペアレントトレーニング等)80単位/回利用児童1人につき月1回まで児発管+ファシリテーター職員

※併算定ルール: 同一児童について同月内にⅠとⅡを両方算定することはできません。「個別かグループのどちらか月1回」が上限です。

加算Ⅰ — 個別相談の算定要件

  • 【事前予約】保護者からの相談予約または事業所からの相談案内を経て実施(飛び込み・送迎時のついで会話は不可)
  • 【相談時間】おおむね30分以上(自治体運用で目安が示されている場合は遵守)
  • 【相談場所】事業所内の相談スペース(プライバシー確保された場所)
  • 【相談内容】支援計画・行動課題・家族関係・きょうだい児対応・福祉サービス利用等、児童の発達支援に関わるテーマ
  • 【記録要件】相談記録(日時・参加者・テーマ・経過・今後の方針)を残す
  • 【対応者】児発管が望ましい(児童指導員・保育士の対応も可だが児発管監督下が安全)

加算Ⅱ — グループ相談・ペアレントトレーニング

Ⅱは複数家族を対象とした集団形式の相談支援です。代表的な実施形態は(1)ペアレントトレーニング、(2)家族交流会(同じ障害特性を持つ児童の家族同士の情報交換)、(3)家族向け勉強会(発達障害理解・就学準備等のテーマ別講座)、です。Ⅰと異なり「複数家族」を相手にするため、ファシリテーション能力と心理的安全性の確保が運用の鍵になります。

  • 【参加家族数】複数家族(2家族以上)
  • 【ファシリテーター】児発管+ファシリテーター職員(心理職・OT・STが望ましい)
  • 【時間】60分以上の集団プログラムが標準
  • 【プログラム】事前にレジュメ・進行表を作成
  • 【記録】参加家族リスト+プログラム実施記録+各家族への個別フィードバック記録

グループ相談で「参加した家族全員に加算算定」する場合、参加家族の個別記録(その家族にとっての気づき・支援課題・今後の対応)を1家族ずつ残す必要があります。「グループで何を話したか」だけの記録では実地指導で否認されるリスクがあります。

家族支援加算との違い

令和6年度改定で家族支援に関する加算が再編され、「事業所内相談支援加算」とは別に「家族支援加算(訪問型・通所型)」が整備されました。両者の違いを正しく理解しないと、本来取れる加算を取りこぼしたり、逆に二重算定で返還リスクを抱える事態になります。

加算名実施場所対象単位数の目安備考
事業所内相談支援加算Ⅰ・Ⅱ事業所内保護者(個別/グループ)100/80単位相談支援の評価
家族支援加算(訪問型)家庭訪問保護者+家庭環境時間に応じた単位数(令和6年度新設)家庭での支援を評価
家族支援加算(通所型)事業所内保護者+児童同伴時間に応じた単位数通所のついでに保護者支援を実施

※同日同一保護者に対して「事業所内相談支援加算」と「家族支援加算(通所型)」を両方算定することは原則できません。実態として「相談支援が中心ならⅠ・Ⅱ」「保護者と児童同伴の親子療育的セッションなら家族支援加算」と切り分けます。

面談時間の根拠記録 — 実地指導での確認ポイント

  • 相談予約簿(日時・予約方法・保護者氏名)
  • 相談実施記録(開始時刻・終了時刻・対応者・場所・テーマ)
  • 相談内容のサマリ(支援課題・合意事項・次回までの宿題)
  • 個別支援計画への反映(モニタリング記録に相談結果を反映)
  • 保護者からの相談メモ・受領資料の保管

保護者面談の時間記録は、対応者(児発管等)のシフト記録と矛盾しないことが重要です。「保育士が午前中に保育業務をしながら同時に1時間の個別面談をした」という記録は実地指導で必ず疑問視されます。面談時間は支援業務から切り離した時間で記録してください。

年間収入インパクトと運用設計

定員10名・利用児童20名の事業所で、利用児童全員に月1回の個別相談(加算Ⅰ)を実施した場合、年間収入インパクトは(100単位×20名×12ヶ月×10円=)24万円となります。グループ相談を毎月1回開催し10家族が参加する設定では(80単位×10家族×12回×10円=)9.6万円が追加されます。Ⅰ+Ⅱの組み合わせで年間30万円超のインパクトを作れるため、児発管1名の業務リソースを「相談予約・実施・記録」に組み込む運用設計が経営合理性を持ちます。

取りこぼしを防ぐ運用フロー

  • ①初回利用時に保護者面談の月次予約を組む(年間スケジュール化)
  • ②半年に1回の個別支援計画見直しと連動させて面談実施
  • ③面談記録テンプレートを定型化(支援課題・合意事項・宿題)
  • ④月次でグループ相談(ペアレントトレーニング等)を1回設定
  • ⑤月末に加算算定対象リストを作成し国保連請求担当に共有

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児発管・保育士の役割分担

事業所内相談支援加算は「児発管以外の職員」でも算定可能ですが、実務上は児発管が中心となり、保育士・児童指導員が補助に入る形が運用効率も高く、実地指導でも説明しやすい構造です。保育士単独で面談する場合は、児発管がスーパーバイズを行い、面談記録を確認・押印する運用にしておくと安全です。

よくある失敗パターン

  • 送迎時の立ち話を「相談支援」として加算算定している(実地指導でほぼ否認)
  • 面談記録に開始時刻・終了時刻が記載されていない
  • 保護者面談を月2回以上算定している(上限超過)
  • 同日にⅠとⅡを両方算定している(併算定不可)
  • グループ相談で参加家族別の記録がない(全員一律のメモのみ)

まとめ — 保護者支援を加算化する文化を作る

事業所内相談支援加算は単位数こそ大きくありませんが、保護者との信頼関係構築・継続利用率の向上・行動課題への早期対応という観点で、運営面でのリターンは非常に大きい加算です。「保護者面談を月1回実施する」という文化を事業所内で作り、児発管がそのリードを取る運用に切り替えることで、加算収入と運営品質の両方を底上げできます。

参考・引用

  • こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」(留意事項通知)
  • 厚生労働省告示「障害児通所給付費等単位数表」(児童発達支援・放課後等デイサービス)
  • 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(本体資料)
  • こども家庭庁「家族支援に関する障害児通所支援事業所向けガイドライン」
  • 社会保障審議会 障害者部会 報酬改定検討チーム 議事録

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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