制度・学術

性暴力防止法(日本版DBS)対応 — 児発・放デイの確認義務と就業制限の実務

令和6年6月成立のこども性暴力防止法(日本版DBS制度)について、児発・放デイ事業者の確認義務、対象犯罪歴の範囲、犯罪事実確認書の請求手順、就業制限規程の整備、令和8年12月の本格施行までに事業所がやるべき準備を完全解説。

公開: 2026-05-30読了 約8

こども性暴力防止法(日本版DBS制度・令和6年法律第69号)は令和6年6月に成立し、令和8年12月25日までの政令で定める日に本格施行されます。学校・保育所・児童福祉施設等の「特定事業者」には特定性犯罪事実の確認義務が課され、児発・放デイも例外ではありません。本記事では、児発・放デイ事業者が施行までに準備すべき就業制限規程・確認手順・採用フロー改修を整理します。

日本版DBSとは何か

DBS(Disclosure and Barring Service)は英国の犯罪歴開示制度に倣った仕組みで、日本では「こども性暴力防止法」として令和6年6月に成立しました。子どもに接する業務に就く者の特定性犯罪歴(過去20年〜終身)をこども家庭庁長官が確認し、事業者に通知する制度です。児発・放デイの常勤・非常勤・送迎運転手・実習生まで、児童と接する全職員が対象です。

対象となる犯罪歴の範囲(法第2条第7項)

確認対象となる「特定性犯罪」は、刑法上の強制性交等罪・強制わいせつ罪、児童福祉法上のわいせつ行為、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、迷惑防止条例違反(痴漢・盗撮)等です。確認対象期間は、拘禁刑相当の前科は刑終了後20年、罰金刑相当は刑終了後10年、罪を犯した日から起算する罪は当該日から20年です。

犯罪類型確認対象期間備考
拘禁刑(懲役・禁錮)相当刑の執行終了後20年強制性交等罪・強制わいせつ罪等
罰金刑相当刑の執行終了後10年盗撮・痴漢の迷惑防止条例違反等
不起訴・公訴時効原則として確認対象外前科にあたらないため
少年事件(保護処分)原則として確認対象外少年法上の処分は前科扱いされない

児発・放デイ事業者の義務(特定事業者・認定事業者)

こども性暴力防止法第3条・第4条は、法の適用対象を「特定事業者」「認定事業者」に分けます。学校・認可保育所・児童福祉施設等は「特定事業者」として義務適用、塾・習い事・無認可施設等は「認定事業者」として任意認定の枠組みです。指定を受けた児発・放デイは特定事業者に該当し、確認義務が課されます。

  • 新規採用時の犯罪事実確認(法第8条) — 採用前または採用後速やかに
  • 在職中職員の犯罪事実確認(法第8条) — 経過措置期間中に実施
  • 採用前ヒアリング(法第6条) — 性的虐待・不適切な接触の有無
  • 研修の実施(法第10条) — 全職員に対する性暴力防止研修(年1回以上)
  • 相談・通報体制の整備(法第11条) — 児童・保護者からの相談窓口
  • 内部監督・報告体制の構築(法第12条) — こども家庭庁長官への重大事案報告義務

犯罪事実確認の手順(政令で定める手続)

事業者がこども家庭庁長官に犯罪事実確認書を請求する手順は、令和7年公表の「犯罪事実確認制度の運用に関するガイドライン」で詳細化されています。本人同意ベース(法第8条第3項)で、事業者が直接請求するのではなく、本人がこども家庭庁にオンライン申請し、「該当なし証明書」または「該当あり通知」が事業者に交付されるフローです。

順序手順所要日数(目安)
1事業者が対象者(採用予定者・在職者)に本人申請を依頼1日
2対象者がこども家庭庁オンライン窓口で本人申請対象者の操作次第
3こども家庭庁が法務省・警察庁データベース照会7〜14日
4対象者本人へ結果通知(郵送 or オンライン)14〜21日
5対象者から事業者へ犯罪事実確認書を提示対象者次第
6事業者が記録を保管(5年)・採用判断即時

犯罪事実確認書の取得には2〜3週間を要するため、内定から就業開始までのリードタイムを1か月以上見ておく必要があります。「来週から働いてほしい」運用は不可能になるため、採用フロー全体の見直しが必須です。

「該当あり」通知時の対応(就業制限・配置転換)

対象者に該当する性犯罪歴がある場合、事業者は「児童と1対1で接触する業務に従事させない」措置を取る義務があります(法第8条第5項)。完全な雇用拒否義務ではなく、「業務配置の見直し」が原則ですが、児発・放デイの場合は「児童と接しない業務」がほぼ存在しないため、結果として採用見送り・配置不能となるケースが大半です。

  • 採用前確認の場合 — 内定取消は合法(法第8条解説、就業規則明記が前提)
  • 在職者確認の場合 — 配置転換or懲戒。一方的な解雇は労働契約法上のリスクあり
  • 配置転換不可能な小規模事業所 — 法的根拠による退職勧奨が認められる
  • 本人不同意で確認拒否 — 採用拒否事由として正当(法第8条第3項)

就業規則・採用規程の改修ポイント

法の本格施行までに、就業規則・採用規程に以下条項を追記してください。労働条件通知書・誓約書のテンプレも同時改訂が必要です。

  • 採用条件として「犯罪事実確認書の本人申請・提示への同意」を明記
  • 内定段階で犯罪事実確認書の取得を条件とし、未提示は内定取消事由とする条項
  • 在職者の犯罪事実確認の定期的実施(5年ごと等)を就業規則で明文化
  • 「該当あり」通知時の配置転換・退職勧奨に関する条項
  • 犯罪事実確認書の保管期間(5年)・廃棄手順
  • 個人情報保護法上の要配慮個人情報としての安全管理措置(別途規程)

年1回の性暴力防止研修(法第10条)

こども性暴力防止法第10条は、全職員への性暴力防止研修の実施を義務化しています。虐待防止研修とは別建てで実施することが推奨されており、年1回・60分以上が目安です。

時間内容
1. 法の概要と確認義務10分こども性暴力防止法の枠組み・対象犯罪・確認手順
2. 性暴力の定義と類型15分身体的接触・非接触・グルーミング・SNS経由
3. 児発・放デイ特有のリスク10分トイレ介助・着替え・送迎時の異性介助
4. 事例ワーク(グレーゾーン判定)15分保護者対応・職員間関係・SNS発信
5. 通報窓口と相談体制7分自事業所窓口・外部窓口・こども家庭庁ホットライン
6. 修了確認テスト3分対象犯罪・確認手順・通報先の3問

こども性暴力防止法対応はROOTS Work|研修の法定研修パックで一括対応可能。年1回の性暴力防止研修動画・就業規則改訂テンプレ・犯罪事実確認フロー図・採用面接質問集まで含めて提供。本格施行までに必要な実務をワンストップで整備できます。

令和8年12月施行までのロードマップ

令和6年6月成立・令和8年12月25日までの政令で定める日に本格施行のため、事業者の準備期間はおおむね令和8年中までです。以下スケジュールで進めれば余裕を持って対応できます。

時期実施内容
令和7年度中就業規則・採用規程の改訂、職員説明会
令和8年4月〜9月在職者の犯罪事実確認(本人申請依頼)順次開始
令和8年10月採用フロー(内定→確認→就業)の運用テスト
令和8年12月本格施行・新規採用全員に確認書取得
以降毎年4月新人研修内に性暴力防止研修を組込み

こども性暴力防止法は、児童福祉業界にとって採用フロー全体を組み替える大改革です。「施行直前に慌てて対応」では確実に事故が起きます。令和7年度中に就業規則を整え、令和8年度に在職者確認を粛々と進める二段構えで、施行日を迎えてください。

参考・引用

  • こども家庭庁「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号)」
  • こども家庭庁「日本版DBS制度の概要」(令和6年6月公表)
  • こども家庭庁「こども性暴力防止法の解説(逐条解説)」(令和7年8月版)
  • 法務省「犯罪事実確認制度の運用に関するガイドライン」(令和7年公表)
  • こども家庭庁「民間教育保育等事業者の認定申請の手引き」(令和7年12月版)

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づきます。制度・自治体の運用は変更される可能性があります。

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